【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染が再び拡大する米国で、マスクをめぐる論争がやまない。マスク着用が感染拡大を和らげる効果は理解されるようになったが、着用義務化には保守層を中心に「個人の自由だ」として強い抵抗があるのが現状。マスク論争が米社会をさらに分断させ、着用義務化に反対するトランプ大統領の下で政治問題化している。
 ◇義務化に異論
 「ここは米国だ。中国とは違う」。新たな感染震源地となった南部フロリダ州のオーランド近郊のレストランで今月中旬、郡のマスク着用令を守るよう行政指導に入った職員に対し、「反マスク」活動家の男性が詰め寄った。男性は地元メディアに「自分の健康は自分で決める権利がある」と反論した。
 6月以降の感染急増は共和党地盤の南部を中心に深刻な影響をもたらしたが、マスク強制への反発は相変わらず強い。ギャラップ社が今月13日発表した世論調査によると、72%が日常的にマスクを着用すると答える一方、共和党支持層に限れば46%にとどまる。
 南部ジョージア州では16日、独自にマスク着用を市民に義務付けたアトランタ市のボトムズ市長(民主)に対し、ケンプ州知事(共和)が「州命令違反」だとして提訴した。
 マスク強制への感情的な反発について、心理学者のエミリー・クロスカ・アイオワ大学准教授は、パンデミック(世界的流行)下での心理的抑圧との関係を指摘する。「この生活がいつまで続くのか、何かに支配されるのではないかという不安が影響している」と解説した。
 ニューヨーク大学のジェイ・バベル准教授(心理学)は二大政党が激しく対立する状況が、マスク着用論争を政治問題化させていると分析する。「トランプ氏はマスクを軽蔑するコメントを通じ、共和党支持者に強いサインを送り、乾いた森に火をつけるように対立をあおった」と見る。
 ◇「最強の武器」
 米国で最初の感染例が報告されて20日で半年。マスク着用の有効性をめぐって、当初は一般人の着用を不要としていた米保健当局の姿勢は大きく変わった。米疾病対策センター(CDC)の最新の報告によると、ミズーリ州の美容院で2人の美容師がコロナに感染したが、マスクを着用していたために139人の客から一人も感染者が出なかったという。
 CDCのレッドフィールド所長は14日の声明で、マスクをウイルスに対抗する「最も強力な武器」だと主張した。仮に米国民全員が着用すれば、1~2カ月で「制御可能」という認識も示す。
 最近初めて公の場でマスクを着けたトランプ氏は19日に放送されたFOXニュースのインタビューで「私はマスクの信奉者だ」と言い放った。だが、着用義務化については「ある種の自由」があるべきだと反対した。
 バベル准教授は「米国よりはるかにうまく対処した国は、指導者が国民に正しいメッセージを送っている」と指摘し、政治指導者がマスク着用をきちんと指示することがコロナ克服の第一歩だと訴える。 (C)時事通信社