患者の治療に当たる主治医らが、死に至る薬を与える行為は「積極的安楽死」と呼ばれ、過去には有罪判決が確定している。ただ今回、嘱託殺人容疑で逮捕された医師らは主治医でなく、SNSを通じて患者と知り合い、遠方から自宅を訪れたとみられる点でも異例だ。
 患者の意思に基づき延命治療を中止する「消極的安楽死」は、医療系学会のガイドラインなどで事実上認められてきた。ただこれについても、意思の変化などに対し慎重な対応が求められている。
 一方、致死薬を投与した例では、1991年に東海大病院(神奈川県伊勢原市)の医師が末期がんの患者に塩化カリウムを投与して死なせた事件で、一審横浜地裁の有罪判決が確定。判決は、(1)耐え難い苦痛(2)死期の切迫(3)患者の意思表示(4)治療を尽くした―の4要件を満たす場合に限り、積極的安楽死が許されるとした。
 98年に川崎市の川崎協同病院で意識不明の患者に対し、医師が呼吸を助ける管を抜き、筋弛緩(しかん)剤を投与して死なせた事件でも、有罪判決が確定した。
 海外では、オランダで致死薬の投与が認められ、米国の一部の州などでは致死薬の処方が認められている。ただ生命倫理の専門家は、いずれも社会の議論を経て、どういった場合に容認されるか定められてきた経緯があると指摘。「社会の議論も法律もなく、医師個人の考えで実施することは到底認められない」と話した。 (C)時事通信社