被爆者を父母に持つ「被爆2世」の不安は、原爆投下から75年がたつ今も続いている。「放射線の次世代への影響は、核による人権侵害の最たるものの一つだ」。被爆者の子らでつくる「全国被爆二世団体連絡協議会」会長の崎山昇さん(61)は、被爆2世を「原爆放射線の影響を否定できない被爆の当事者」と位置付け、被爆者援護法の適用を求める運動を約30年間続けてきた。
 現行の援護法は、救済の対象となる被爆者を直接被爆者と入市被爆者など4種類に分類。該当者には被爆者健康手帳が交付され、手当なども支給される。しかし、被爆2世は対象外だ。国が広島、長崎両市などに委託する健康診断は受けられるが被爆者同様のがん検診はなく、手帳は交付されない。原爆放射線の影響が遺伝するのか解明されていないためだ。
 崎山さんは「遺伝的影響がないと国が断言してくれるなら安心できる。しかし、可能性があるのなら、被爆者を広く救済する趣旨の援護法を適用すべきだ」と訴える。
 いとこを膵臓(すいぞう)がんで亡くし、周囲の人もがんや白血病で亡くなる様子を見てきた。健康不安だけでなく、「被爆2世と分かって仕事を辞めさせられた」と訴えてきた人もいたという。「国民の生命や健康を守るのが国の本来の立場のはずだ」と力を込める。
 被爆2世は全国に30万人とも50万人とも言われるが、正確な数字は分かっていない。「どのくらいいるかという基本的な調査すらやっていない」と憤りを隠せない。2世も高齢化が進み、「このままでは何の援護も受けられないまま高齢の人がいなくなってしまう」と危機感は強い。
 崎山さんらは2017年、被爆2世を援護法の対象としない国会の立法不作為は違法だとして、国に1人10万円の慰謝料を求める裁判を起こした。「政治的、行政的解決を目指してきたが、突破できなかった。裁判を通じて問題の所在を明らかにし、すべての被爆2世を援護の対象とする国の立法的措置につなげたい」と意気込んでいる。 (C)時事通信社