安倍晋三首相は第1次政権任期中の2007年9月に突然辞任し、08年1月の月刊誌「文芸春秋」で難病の潰瘍性大腸炎の悪化が辞任につながったと明かした。その後、新たな治療薬を用い、症状は抑えられていたが、辞任を表明した28日の記者会見では「8月上旬に再発が確認された」と述べた。
 潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起き、血便や下痢、腹痛を引き起こす難病。患者数は増加しており、推定約22万人に上る。20~30代で発症する場合が多いが、子どもや中高年の発症もある。
 潰瘍性大腸炎の原因は分かっていない。松岡克善・東邦大医療センター佐倉病院教授(消化器内科学)によると、遺伝的な要因に、食生活や腸内細菌の変化、ストレスといった環境面の要因が加わって発症すると考えられており、腸の免疫細胞が過剰に働いて炎症を起こす可能性が指摘されている。
 松岡教授は「患者の半数は、以前から使われている炎症を抑える薬で症状が収まる」と話す。軽い再発を繰り返すものの、安静にしたり薬の投与法を変えたりすることで改善するという。安倍首相が07年の辞任後に名前を挙げたのも、これらの薬の一つだ。
 松岡教授によると、従来の薬が効かない患者のうち半数は、ステロイドの服用で改善する。ステロイドも効かない場合の治療は、近年急速に進歩し、複数の新薬が存在する。過剰に働く免疫細胞を血液から除去する治療法もある。一部の患者は十分効果が得られないが、大腸を摘出する手術で症状が収まるという。
 安倍首相は会見で「病気と治療を抱え、体力が万全でない」などと説明。松岡教授は「首相の仕事は治療のために中断できず、辞任につながったのだろうが、ほとんどの患者は薬を飲んで普通の生活や仕事ができる。新しい治療も進んでいる」と語った。 (C)時事通信社