【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染者・死者が世界最多の米国で、ワクチン開発をめぐり政治的思惑に基づく発言が飛び交っている。トランプ大統領は、再選を目指す11月3日の大統領選前に実用化の可能性があると主張。これに対し野党民主党は、認可プロセスが政治的圧力でゆがめられかねないと警戒を強めている。
 トランプ氏はかねて「遅くとも年内、もしかしたら大統領選前に投与を始められるかもしれない」と楽観論を唱えてきた。米メディアによると、疾病対策センター(CDC)は8月下旬、各州当局に11月1日までのワクチン配布開始を想定して準備を進めるよう指示した。
 ワクチンの認可権を持つ食品医薬品局(FDA)のハーン長官は8月末、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「正式な認可とは別に、緊急の使用認可がある」と指摘。治験が終わる前に、緊急措置として投与を認めることもあり得るという見解を示した。
 民主党大統領候補のバイデン前副大統領は、トランプ氏が新型コロナで「初期対応に失敗した」と攻撃している。世論調査の支持率で後れを取るトランプ氏にとって、大統領選前にワクチン投与を開始できれば「実績」として誇示する材料となり得る。
 だが、ワクチンの効果や安全性が十分検証されない段階での投与には異論も出ている。トランプ氏が治療薬認可に慎重なFDAを非難した後、ハーン氏が「緊急認可」に言及したこともあり、民主党は「トランプ政権が選挙のため、FDAに圧力をかけている」(シューマー上院院内総務)と反発している。
 マケナニー大統領報道官は、3日の記者会見で「誰もFDAに圧力をかけていない」と主張。アザー厚生長官も政治的圧力を否定した。一方、トランプ氏は同日夜、ペンシルベニア州での集会で演説し「10月末までに(ワクチンが)配布されるかもしれない」と訴えている。 (C)時事通信社