自民党の菅義偉新総裁にとって最大の課題は、新型コロナウイルスの感染収束と日本経済の立て直しという「相いれない目標」の両立だ。安倍政権の継承を掲げる菅氏は、緊急事態宣言の再発令を避けつつ、経済・社会活動の再開を進める方針。ただ、人の動きを活発化させれば、感染再拡大を招きかねない危うさもはらむ。
 「危機を乗り越えるため、安倍晋三首相の下で取りまとめたコロナ対策を実行に移す」。菅氏は14日、新総裁就任後の記者会見でこう強調した。
 菅氏は、経済への打撃が大きい宣言再発令に否定的だ。月刊誌「文芸春秋」のインタビューでは、4~6月期の国内総生産(GDP)速報値が年率換算で27.8%減だったことを挙げながら、「再び経済活動を全面的に制限することはできる限り避けるべきだ」と語っている。
 菅氏の基本戦略は、これまでに得られた科学的知見に基づく感染防止策を講じ、休業要請などを最小限に抑えることだ。当面は安倍首相が先月発表した対応方針に沿って、(1)1日20万件の検査体制構築(2)高齢者施設職員らへの定期一斉検査(3)かかりつけ医への相談体制整備―などに取り組む。
 さらに、全国民分のワクチンを来年前半までに確保し、同年夏の東京五輪・パラリンピック開催につなげたい考えだ。
 一方、日本経済について、菅氏は「来年の今ごろに完全に元に戻す」ことが目標だ。このため、感染防止策の徹底と並行して、旗振り役を務める観光支援事業「Go To トラベル」など、需要喚起策を推進。同事業の対象外だった東京都も10月から対象に追加する方針だ。
 景気の状況を見極めつつ、2020年度第3次補正予算案の編成も検討するとみられる。
 ただ、性急な経済・社会活動の再開には、政府の新型コロナ分科会の中にも不安視する声がある。仮に感染爆発が起きれば、重症者・死亡者が急増し、経済の失速も避けられないためだ。
 そうなれば、間もなく発足する新政権の足元が揺らぎかねない。菅氏は首相就任直後から、難しいかじ取りを迫られそうだ。 (C)時事通信社