【ワシントン時事】新型コロナウイルスに感染したトランプ米大統領は5日、退院を「強行」し、劇的な帰還とコロナへの勝利を演出した。だが、病状は危険な段階を完全に脱したとは言えず、足元のホワイトハウスでも大量の感染者を出すなど、勝利とは程遠い状況だ。大統領選まであと4週間となる中、困難な状況が続いている。
 ◇「未知の領域」
 「われわれはやや未知の領域に入っている」。トランプ氏の専属医コンリー医師は5日の記者会見で、トランプ氏が診断初期の段階から未承認薬や重症患者向けの治療を受けていることについて、率直に語った。
 目立ったのは、退院の判断の妥当性を疑わせる言葉だ。容体の急変があり得る期間とされる「診断から7~10日」が経過していないのではと問われ、「その通りだ」と返答。「もし次の月曜日(12日)まで今の状態を維持していれば安心できる」と強調したものの、肺の炎症の有無への言及を避けるなど、症状に関しては具体性を欠く説明に終始した。
 米メディアによると、トランプ氏は大統領選を控え早期退院を熱望していたという。メドウズ大統領首席補佐官は、早い段階から共和党議員に「6日以降も病院にいたら、いよいよ病状が深刻ということだ」と語っていたといい、5日の退院がトランプ氏にとっては既定路線だった節がある。
 トランプ氏はツイッターで「私は20年前よりも元気だ」と強がった。
 ◇逃げ切り狙う
 トランプ氏と民主党のバイデン前副大統領の選挙戦は、最終盤を迎える。9月29日の討論会は泥仕合に終わったものの、バイデン氏は、トランプ陣営が強調する「認知能力不足」をさらけ出す場面もなく、リードを広げたという見方が強い。CNBCテレビが5日発表した世論調査でも、バイデン氏が支持率で10ポイント差をつけた。
 バイデン氏としては、優位を維持し、逃げ切れるかが問われる。トランプ氏のコロナ感染で開催が危ぶまれる15日の第2回討論会への参加について、バイデン氏は「科学者の言うことに耳を傾ける」と米メディアに述べるにとどめた。トランプ陣営が反転攻勢を狙う中、民主党内では「強行する必要はない」という意見がある。
 一方でバイデン氏は、トランプ氏の感染に対する認識の甘さを突いていく構えだ。トランプ氏批判のテレビ広告の放送を控えていたバイデン氏だが、5日の集会では「マスクなど不要と言って感染した人は、自分の身に起こることに責任を負うべきだ」と訴えた。 (C)時事通信社