2012年の論文発表以来、瞬く間に生命科学の世界を一変させたゲノム編集技術。ノーベル化学賞の受賞が決まったエマニュエル・シャルパンティエさん(51)とジェニファー・ダウドナさん(56)は17年の日本国際賞受賞で来日した際、「基礎研究が強力な技術につながった」と意義を強調しつつ、予想を上回る発展に「この技術が採用されたペースには驚かされている」と戸惑いも口にしていた。
 感染性疾患の基礎研究に取り組んできたシャルパンティエさん。「なぜ感染し、発症するのか。メカニズムを明らかにする中で見つかったのが『クリスパー・キャス9』だった」と明かす。ダウドナさんも「科学に関する好奇心からスタートした研究が、結果として興奮を呼ぶ結果をもたらした」と話し、画期的な発見の背景には地道な基礎研究があったことを強調した。
 シャルパンティエさんは「ライフサイエンス(生命科学)の世界がどこまでこのような強力なツールを求めているか、承知していなかった」と振り返る。論文の発表直後から、世界中の科学者から大きな反響が寄せられ、農産物の改良や遺伝子治療、創薬などにも利用可能性が広がっている。一方で、親が生まれてくる子の容姿や能力を自在に改変する「デザイナー・ベビー」誕生の可能性も高まり、倫理面から懸念が強まった。
 シャルパンティエさんは「多くの議論が世界で起きていることに意を強くしている。テクノロジーの良い側面を理解し、規制に反映すべきだ」と国際的な議論を歓迎する。ダウドナさんも「力のある技術だからこそ、倫理面での検討は大事だ。科学者だけでなく一般の人も参加し、議論を深めていく必要がある」と力を込めた。 (C)時事通信社