東京女子医大病院の男児死亡事故では、治療に携わった耳鼻咽喉科と麻酔科が事故後、別々に会見を開くなどして責任のなすり付け合いに発展。第三者委員会の調査でも両科の連携不足が浮かび上がった。医療現場では、重大事故につながりかねない縦割りの弊害を打破しようと模索が続く。
 高度医療を提供する「特定機能病院」の東京慈恵会医科大付属病院では、2002年に同大付属青戸病院で腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた男性患者が死亡した事故を契機に、安全体制の構築に注力してきた。
 慈恵医大病院の院長補佐時代、医療安全の責任者を務めた同大の落合和徳客員教授は「大きな病院ほど縦割り意識が強く、医療安全はそれをつなぐ横串としての役割が必要」と指摘する。同病院は、各診療科に最低1人ずつ医療安全を担う「セーフティマネージャー」を置き、定期的な会議や相互視察などで情報共有を図っている。
 同病院ではコミュニケーション不足が原因のミスや事故が多かったため、関係する診療科と看護師らによる手術前の会議を10年に設置。1人でも必要と主張すれば開かれるため、現場では当初反発も強かったが、今では手術がスムーズに進み、落合客員教授は「チームワークを意識した診療をしやすい環境ができつつある」と話す。
 女子医大病院について、厚生労働省は15年6月、特定機能病院の承認を取り消した。禁忌薬の理解不足など安全管理体制が確保されておらず、情報共有も不十分だったことを理由に挙げた。
 腹腔鏡手術を受けた患者8人が死亡した群馬大付属病院でも、同時期に承認が取り消された(19年4月再承認)ことから、同省は特定機能病院の承認要件を見直した。新たに▽安全管理責任者の配置▽全死亡事例の報告▽適応外、禁忌に該当する薬の処方を行う際の指導▽監査委員会による外部監査―などを要件に追加した。 (C)時事通信社