大阪市を廃止して四つの特別区に再編する「大阪都構想」に、市内の障害者らが反対の声を強めている。制度案では将来的な福祉サービスについて詳細な言及がなく、「サービスの切り下げは生活や命に直結する」と危機感を訴える。
 生まれつき脳性まひのある井上龍之介さん(24)は、公的サービスの「重度訪問介護」でヘルパー介助を利用しつつ、市内のマンションで1人暮らしをする。体が不自由で電動車いすに乗っており、「利用時間が減らされれば生活が立ちゆかなくなる」と不安を漏らす。
 重度訪問介護は国の制度だが、ヘルパーの利用をどこまで認めるかは市町村に裁量がある。大阪市では約1880人が利用し、東京都の約1980人と肩を並べる規模で、制度導入前から障害者団体などが粘り強く訴え、拡充されてきた経緯がある。
 都構想が実現すればこうした業務は四つの特別区が担うことになる。松井一郎市長ら推進派は「住民ニーズに沿った予算編成ができる。10年間で200億円を追加配分し、サービスを安定的に提供する」と強調する。
 ただ、サービス水準について制度案では「必要性や妥当性を十分検討し、向上に努める」としか記載がない。府は4区の税収格差に配慮して財源を配分する計画だが、府と市の担当者は「特別区設置後は、区長と区議会が地域の実情に応じて判断する」として、サービス見直しの可能性も否定していない。
 重度障害者の生活を支えるNPO法人「ちゅうぶ」(同市東住吉区)の石田義典事務局長は、「市の施策には先進的な面もあったが、利用者が数十人しかいない細かなサービスから削られるのではないか」と懸念する。
 福祉行政に詳しい立命館大の石倉康次教授は「制度案には大まかな記載しかなく、市民の不安はもっともだ」と指摘。「特別区は財源や権限が絞られており、福祉サービスが向上するとは考えにくい。特別区議会の議員定数も少なく、少数者の声が行政に反映されるか疑問が残る」と話す。 (C)時事通信社