不妊治療で生まれた子の親子関係を定める民法特例法案が16日、参院に提出された。専門家は、これまで行われてきた第三者からの精子提供に加え、卵子提供を事実上容認する内容だと指摘する。生まれた子が提供者の情報を知る「出自を知る権利」など重要な課題は先送りされており、当事者から懸念の声が上がっている。
 法案は「女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し、出産したときは、その出産をした女性をその子の母とする」などの規定を設け、精子や卵子の提供を受けて生まれた子の親子関係を定めている。
 これに対し、柘植あづみ・明治学院大教授(医療人類学)は「精子、卵子の提供という技術を国が認めることになる」と指摘する。関係者によると、現在は卵子提供を認めていない日本産科婦人科学会も、法律が成立すれば解禁を検討する見通しだ。
 精子提供で生まれた50代の女性は「国が技術を認めるなら、出自を知ることを保証してほしい」と訴える。
 女性が30代だった時、両親が離婚し、母から「お父さんは本当の父親ではない。本当の父親は誰か分からない」と知らされた。女性は、大切なことを長年隠されていたという怒りや、自身を肯定できない思い、自分の半分を知りたいという願いに苦しんだといい、「子供がどう生まれたかを親が子に告知する必要性と、子が提供者を知ることを法律に書いてほしい」と求めた。
 法案には精子や卵子の売買についての規定がない。卵子の提供者や妊娠する女性の心身の負担についても、十分議論されていない。柘植教授は「問題が後回しにされている」と批判した。 (C)時事通信社