【ワシントン時事】トランプ米大統領は、新型コロナウイルスのワクチンを大統領選前に実現させ、再選に有利な実績を作ろうともくろんだ。だが、結果的に思惑は空振りに終わり、ワクチンや保健政策に対する国民の強い不信感が残った。
 「安全なワクチンがすぐできる」「10月末に配布できるかもしれない」。トランプ氏は、全米各地での選挙演説で、ワクチンへの期待感を振りまいてきた。コロナ危機に打ち勝つ「戦時大統領」として強い指導力を演出し、感染拡大防止の失策に対する批判をかわす狙いだった。
 トランプ政権は、製薬会社への資金支援を通じワクチンの早期実用化を後押しする「ワープ・スピード作戦」を展開。一方で、安全性を重視してワクチン緊急使用許可へ厳しい指針を打ち出した食品医薬品局(FDA)に圧力をかけ、10月にはハーン長官の更迭観測が浮上した。
 ワクチン配布をせかす政権に、ニューヨーク州のクオモ知事が「公衆衛生政策を大統領選に合わせて決めるのは問題だ」と反発するなど、安全性や保健当局への信頼が揺らいだ。報道によれば、ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)は従業員へのメッセージで「重大な疾病対策が政争の具となっている」と失望感をあらわにした。
 ギャラップ社が17日発表した世論調査によると、ワクチン接種に前向きな回答者は58%。同社は「開発と臨床試験(治験)の期間が長ければ、接種への抵抗感が減る可能性がある」と分析している。
 トランプ氏は、来年4月ごろまでにワクチンが一般市民に普及すると言及している。バイデン新政権は専門家の提言に基づくコロナ対策を重視する考えだが、国民の間に広がったコロナ対策への不信感をぬぐうのは容易ではない。 (C)時事通信社