【ニューヨーク時事】米・独企業が共同開発する新型コロナウイルスのワクチンが20日、米当局の承認を待つ段階に移った。昨年末以降、世界に広がったコロナ禍の収束に向け、一歩前進した形だ。ただ、全世界に行き渡るまでには困難も予想される。
 「ここ最近の進展は希望の光だ」―。グテレス国連事務総長はこう述べ、ワクチン開発の前進に期待感を示した。米ジョンズ・ホプキンス大の集計によれば、世界のコロナによる死者は130万人を超え、感染拡大ペースは10月以降、加速傾向にある。
 感染者を治療する薬は複数が世に出ているが、ワクチンの展開はこれから。限定的に使われているロシア製や中国製を除けば、承認済みのワクチンはまだない。米コンサルティング大手は、コロナの重症化リスクが高い人たちがワクチンを接種することが「社会・経済活動を正常化する手段の一つ」と指摘する。
 ただ、普及に向けた課題は多い。米国での申請第1号となった米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックによるワクチンは、セ氏マイナス70度前後での保存が必要で、医療施設での保冷設備の不足が指摘されている。
 ファイザーは最大5000回分のワクチンを15日間、低温状態で運べる特別仕様の容器を開発した。ただ、米メディアによると、保冷用のドライアイスを交換しなければこの期間は10日程度になるなど、その保管の難しさへの懸念は大きい。
 さらに、先進国・途上国間の分配の偏りを不安視する声もある。米デューク大によれば、多くの先進国が製薬企業との個別契約を通じて「人口の数倍分」のワクチンを確保し、「争奪戦」の様相を呈している。これに対し、資金面の問題を抱える途上国は人口の20%分を確保するため、世界保健機関(WHO)などが主導する国際的な枠組みに頼らざるを得なくなっている。
 途上国ではそもそも、品物を変化させず冷たいまま配送する「コールドチェーン」のインフラも貧弱。隅々まで浸透させるにも課題が残る。
 また、心理的な問題も少なくない。ファイザーは「深刻な安全上の懸念は確認されていない」と説明するが、接種を控える動きが広がる可能性もある。実際、米医療専門メディアSTATなどが10月に実施した調査では、ワクチン実用化後すぐに接種したいと答えた米国人の割合は58%で、8月時点の69%から低下した。 (C)時事通信社