新型コロナウイルスの感染者発生を素早く捉え、拡大を防止するため、山梨大の原本英司教授らはふん便や鼻水などにより下水に流れたウイルスを効率良く検出する技術の開発に取り組んでいる。高齢者施設や非感染者対象の入院病棟、学校、オフィスビルなどの下水でウイルスの有無を監視し、検出した場合はPCR検査などで感染者を特定できるようにするのが目標だ。
 無症状の感染者が増えているが、PCR検査などを定期的に続けるのは検査要員やコストの負担が大きい。施設ごとにまず感染者の発生を把握できれば、負担を減らせる。技術開発は科学技術振興機構の国際共同研究支援事業で進められており、原本教授は「下水からの検出法を確立し、最終的にはウイルスの濃度から感染者が何人いるか把握できるようにしたい」と話している。
 原本教授はこれまで、急性胃腸炎を引き起こすノロウイルスを下水処理場や河川から検出する研究に取り組み、冬の流行期にノロウイルスの濃度が上昇することを確認した。この技術を新型コロナに応用し、4月に山梨県内で感染者が増えた時期に、下水処理場で沈殿処理された後、塩素消毒を行う前の水からウイルスのリボ核酸(RNA)を検出することに成功した。
 新型コロナウイルスには、ノロウイルスにはない「エンベロープ」と呼ばれる脂質と糖たんぱくから成る被膜があり、下水中のウイルスRNAの回収率に影響するとみられる。このため原本教授は北海道大の北島正章助教らとともに、新型コロナと構造や形態が近く、人に病原性がないウイルスをモデルとして、7種類の回収方法の比較実験を行った。その結果、RNAの回収率が最も高かったのは、下水に塩化マグネシウムを加え、精密なろ過膜でろ過する方法だった。
 ウイルスは体内でしか増殖できず、下水に流れて時間がたてば感染力を失うが、感染力が続く期間も解明する必要があるという。 (C)時事通信社