政府は24日、札幌、大阪両市を目的地とする「Go To トラベル」の一時停止を決めた。予約済みの旅行も割引停止とする一方、両市から出発する旅行は引き続き助成対象とするなど、場当たり的な対応との印象は否めない。「第3波」に対する菅義偉首相の対応は腰の重さが目立つ。
 「私権制約は必要最小限にしなければいけない。知事の意向を尊重しサポートしたい」。西村康稔経済再生担当相は24日、全国知事会とのテレビ会議で「トラベル」見直しについて、地域の実情に通じた各知事が主体で行うべきだとの考えを強調した。
 ただ、トラベル事業を停止するかどうかについて、各知事の判断に委ねるとの方針には「丸投げ」との批判もある。旅行促進策の停止が、西村氏の指摘する個人の権利制限にどうつながるのかも判然としない。
 全国知事会は、感染拡大地域から出発する旅行も一時停止の対象とするよう主張したが、西村氏は「医療の逼迫(ひっぱく)地域に多くの人が訪れ、感染が広がれば影響が出るとの考え方で整理した」と説明。両市出発の旅行は引き続き、割引対象とするが、政府関係者は「西村氏の説明を踏まえれば、病床の少ない離島なども対象外とすべきだ」と述べ、一連の対応を「ちぐはぐ」と断じる。
 政府がトラベル事業見直しにかじを切ったのは、新型コロナ対策分科会が20日の提言で「英断を心からお願いする」と踏み込んだことがきっかけ。各地では今月初めごろには感染拡大が始まっていたが、事業の見直しは分科会の提言後に突貫作業で進められた。利用者や事業者への周知はずれ込み、混乱は避けられそうにない。
 こうした政府の対応は、トラベル事業が首相の肝煎りであることも影響しているとみられる。制度設計には首相ブレーンの関与も指摘され、政府内からは「簡単に手を出せない」(省庁幹部)との声も漏れる。官邸幹部によると、首相が「第3波」に懸念を示したのは、1日当たりの感染確認数が全国で2000人を超えた先週半ば以降だったという。その後も、首相は記者団への短いメッセージなどを述べるだけで、感染対策を丁寧に説明する場面はみられなかった。
 政府の明確なメッセージを欠く中、23日までの3連休は各地で多くの人出が見られた。感染拡大によって、東京都や名古屋市では病床不足などが指摘されているが、感染拡大防止と経済回復の両立を目指す政府高官は「マスコミが不安をあおっている」といら立ちをあらわにした。 (C)時事通信社