【ニューヨーク時事】新型コロナウイルスのワクチン開発競争で、米製薬大手ファイザーが先進国当局による承認の先陣を切った。同社のワクチンはコロナウイルスの遺伝情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」を活用。この種のワクチンの実用化は初めてで、ファイザーと組む独ビオンテックなど、関連技術を持つ新興のバイオ医薬品企業が脚光を浴びている。
 世界保健機関(WHO)によると、臨床試験(治験)で有効性や安全性を確認中のコロナワクチンは11月中旬時点で48種類。限定的に使われているロシア製や中国製を除けば、ファイザーとビオンテックが共同開発するワクチンが競争をリードした。
 次の承認が有力視されている米モデルナのワクチンもmRNA技術を使う。従来のワクチンはウイルス本体を培養し、毒性を弱めるなどして製造するが、mRNAワクチンなど遺伝子ワクチンはウイルスの一部のみを複製するため、「比較的安価で容易」(米専門家)につくることができる。
 コロナワクチン開発で存在感を高めたビオンテックやモデルナは、細胞など生物由来の物質を用いたバイオ医薬品を手掛ける新興企業だ。化学合成による医薬品が主流を占める中、バイオ医薬品は従来型の薬では治療できなかった病気への効果が期待されている。技術力が評価され、両社の株価は今年に入って急騰している。
 日本では大阪大発のバイオベンチャー、アンジェスがコロナワクチン開発で先行し、6月に治験を開始した。
 一方、取り扱いの難しさも浮き彫りになった。mRNAワクチンは物質的な安定性に欠け、ファイザーのワクチンはセ氏マイナス70度前後での保管が求められる。同社は専用の全地球測位システム(GPS)付き保冷容器を用意して輸送に万全を期すが、医療施設での保冷設備の不足などが問題視されている。 (C)時事通信社