【武漢時事】中国湖北省武漢市政府を相手取り、新型コロナウイルス感染拡大後の1月23日から約2カ月半に及んだ都市封鎖は法的根拠がないとして裁判を起こした元会社員の姚青さん(44)が、時事通信の取材に応じた。姚さんは「警戒の緩みが大規模な拡散を引き起こした」「政府が責任を負わないから提訴した。法に基づいて処理することを望む」と述べ、発生初期の市政府の情報隠しを批判した。
 武漢市当局は最初の患者が昨年12月8日に発症したことを後に確認。同31日に「原因不明の肺炎発生」を公表したものの「人から人への感染」を明らかにしたのは1月20日だった。初動が遅れた背景として、武漢市内で1月上旬~中旬に市人民代表大会や湖北省人民代表大会などの重要会議が開催されたことが広く指摘されている。
 姚さんは「政府は両会(人民代表大会と政治協商会議)を開くと、マイナス面のニュースを全て抑圧した。庶民の生命を顧みず公然とうそをついた。(中国の)記者は勝手にマイナスの報道ができず普通ではない」と非難。情報隠しと感染爆発は「関係がある」と主張し、官製マスコミが一向に警鐘を鳴らさなかったため「1月20日に江漢路(市中心部の歩行者天国)に行ったとき、マスク着用率は1割以下だった」と証言した。
 姚さんは左腕の負傷が原因で失業後、新型コロナが発生した。感染こそ免れたが、都市封鎖や外出制限は過酷な生活を強いた。毎日服用する薬が切れ、「食材が買えず白菜1個で一週間を食いつないだこともある」と声を震わせた。
 姚さんの元会社同僚は、感染拡大を恐れる病院に透析治療を断られ尿毒症により36歳で死去。感染した学生時代の同級生2人のうち1人は遺書すら書いたことを姚さんに打ち明けた。
 10月22日、姚さんは武漢市中級人民法院(地裁)に提訴したが、電話で却下を告げられ、理由の説明はなかった。湖北省上級人民法院(高裁)に上訴したところ、警察から「何を訴えているのか」と問われたという。姚さんは「法律は弱者を全く守らず、政府を守っている」と憤る。
 さらに警察から電話がかかり「外国メディアの取材に応じるな」と脅された。姚さんは「政府と闘えば勝てない」「政府を相手にするのはとても怖い」と不安を口にする。しかし「私は祖国を心から愛している。だからこそ、武漢市政府の官僚主義は必ず誰かが改善を促す必要があると思う」と訴えた。 (C)時事通信社