【武漢(中国湖北省)時事】新型コロナウイルスの感染爆発が世界で最初に起きた中国湖北省武漢市。当局がこれまで確認している「最初期の患者」の発生から8日で1年が過ぎた。都市封鎖によって感染拡大を抑え込んだ「模範例」と宣伝され、経済や日常の回復を急ぐが、市民に深く刻まれた傷痕は癒えないままだ。
 中国料理の軽食屋が軒を連ねる有名観光地の「戸部巷」。5日午後、大勢の客でごった返し、あちこちの店先に行列ができていた。しかし茶専門店の30代女性店員は「以前の店内は混み合っていたが、客足は2、3割しか戻っていない。回復なんてまだまだ」と嘆いた。
 市民のマスク着用率は依然高い。50代男性会社員は「コロナ禍はまだ終わっていない。封鎖された経験があるからみんな怖がっている」と話す。人口1000万人以上の大都市・武漢は1月23日から4月7日まで全域が封鎖された。
 武漢の人気女性作家、方方さん(65)は封鎖中の出来事や考察をブログで発信し、ときには厳しく政府を批判。1億人以上が読んだとされる。方方さんは書面での取材に、コロナ禍で家族を失った人たちは「そんなに早く傷は癒えない。彼らの悲しみは私の悲しみでもある」と答えた。
 都市封鎖の違法性を問い、市政府を相手取って提訴した元会社員の姚青さん(44)は、方方さんのブログを毎日読んだという。姚さんは「私たちはプラス面の情報だけでなく、庶民の悩みや苦しみに目を向けるべきだ。武漢メディアはどれもたいこ持ちで不健全だ」と述べた。地元紙・長江日報は7日、武漢は対コロナの模範を打ち立てた「英雄都市」と自賛する記事を1面に掲載した。
 市中心部・漢口駅近くの「華南海鮮市場」は、昨年12月から感染者が広がり「震源地」として世界的に注目された。かつては市民の台所としてにぎわったが、1月1日に閉鎖され、今は静まりかえる。市場入り口の目印だった看板は外され、周囲は高い仕切りで隠されている。
 武漢市衛生健康委員会によると、6日までの市内の感染者は5万人超、死者は3869人。一方、世界中では感染者6600万人、死者150万人を超えた。その猛威が衰える気配はない。 (C)時事通信社