【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染者、死者数ともに世界最多の米国。バイデン次期大統領は、トランプ現政権の経済優先から感染症予防を重視する方向にかじを切る。ワクチン承認はコロナ克服に向け追い風だが、安全性に対する国民の不信が重くのしかかる。
 「トランプ政権下で科学への信頼は失墜した」。バイデン氏は危機感をあらわにする。経済再開を急いだトランプ氏は、マスク着用を提唱した専門家や州・地方政府と衝突。大統領選前にワクチンを認可するよう保健当局に迫り、ワクチンへの信頼を損ねた。世論調査では、接種しないと回答した米国人は約4割に上る。
 歴代米大統領は公の場でワクチン接種を受ける啓発活動で一肌脱ぐ意向だ。10日のワクチン認可を判断する会合に先立ち、オバマ氏、ブッシュ氏、クリントン氏が相次いで接種を表明し、バイデン氏も賛同した。同氏陣営は選挙時、「トランプ政権下で承認されたワクチンは信用できない」(ハリス次期副大統領)と不安をあおった経緯もあり、軌道修正を図る思惑もありそうだ。
 バイデン氏の目玉政策は、連邦政府が感染症対策を主導する「パンデミック(世界的大流行)検査委員会」の発足だ。大恐慌時のニューディール政策をモデルとし、中央と地方の連携を強化する。国民に対して就任初日に「マスク着用100日間」を要請、感染が深刻な地域に限定したロックダウン(都市封鎖)も視野に入れる。
 ただバイデン氏としては、ウイルス封じ込めを優先する結果、景気が二番底に陥る事態を避けたいのが本音だ。全米でのワクチン普及が早期に進む保証はなく、追加経済対策をめぐる議会の与野党対立も続く。雇用改善には急ブレーキがかかっており、同氏は「議会は即座に行動すべきだ」と焦りを隠せない。 (C)時事通信社