【カイロ時事】米国の制裁下にあるイランで、新型コロナウイルスのワクチン調達が制裁の余波で妨害されていると批判が強まっている。医薬品など人道物資は制裁対象外だが、ワクチン開発を進める欧米の製薬会社も対イラン取引には及び腰だ。中東で最も流行が深刻なイランでワクチン普及が滞れば、周辺国を含むコロナ禍の収束が難航しかねない。
 イラン中央銀行のヘンマティ総裁は7日、コロナワクチンの国際的な調達枠組み「COVAX」から購入を試みたが、「非道な米国の制裁で支払いや送金が妨げられた」と主張した。COVAXはワクチン開発に各国が共同出資し公正な分配を図る取り組みで、イランも参加。約1680万回分を発注済みという。
 報道によると、イラン側は韓国で凍結されている数十億ドル(数千億円)分を購入資金に充てる計画だったが、二次制裁を恐れる銀行が決済取引に難色を示したとされる。
 国外調達のめどが立たず、イランは国内で独自製造も進めている。既に10種類以上を開発中で、近く臨床試験(治験)を始める予定だ。イランのメディアによれば、世界に先駆け国産ワクチンを承認したロシアとの製造協力に向けた協議も開始。ロウハニ大統領は「すべての政府機関が安全なワクチン供給に取り組む」と強調した。
 イランの感染者数は政府の発表で108万人超。感染拡大がやまない中、米国土安全保障省サイバー・インフラ安全局のクレッブス前局長は米メディアに「イラン、ロシア、中国、北朝鮮はワクチンに関する知的財産を盗もうとしている」と述べ、イランを含むワクチン確保に躍起の国々が海外の有用情報を狙ったサイバー攻撃を激化させている可能性を指摘した。
 9日には欧州医薬品庁(EMA)が何者かのサイバー攻撃を受けたと発表した。米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品企業ビオンテックも、共同開発したコロナワクチンに関する資料が不正にアクセスされたと明らかにしている。 (C)時事通信社