新型コロナウイルス対策の実効性を高めるため、政府は特別措置法改正案の取りまとめを急ぐ。焦点は休業や営業時間短縮の要請に応じない事業者の罰則の在り方。菅義偉首相は罰則規定に前向きな立場を示しているが、憲法が保障する国民の権利の制限につながりかねず、政府・与党にも慎重論が根強い。改正案の早期成立は見通せておらず、首相の指導力が問われている。
 「時間短縮をより実効的にするため、特措法改正を視野に入れている」。首相は28日、記者団にこう語り、来年1月18日に召集される通常国会での法改正に改めて意欲を表明。自民、立憲民主両党は国対委員長会談で、2021年度予算案の成立を待たず、改正案を処理することで一致した。
 時短要請を担保する鍵と見込まれるのが、応じない事業者への罰則規定だ。政府は特措法改正で、緊急事態宣言の発令前でも都道府県知事が団体や個人に必要な協力を要請できると定めた24条を見直し、時短だけでなく休業の「指示」を含めた営業規制と、違反した場合の「罰金」を可能とすることで一定の強制力を持たせる方向だ。
 背景には、東京都の時短要請が新型コロナの拡大抑制につながらなかった苦い経験がある。都は新規感染者が目に見えて急増してきた11月28日から、飲食店などに午後10時までの時短を要請。政府は、7月から8月にかけての「第2波」の収束には時短が奏功したとみており、都の要請直後、首相周辺は「1週間でピークアウトする」と自信を示していた。
 だが、実際には12月以降も都の感染者は右肩上がりを続け、感染は首都圏全体に広がった。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、春先からの各種要請に事業者や国民が「へきえきして」おり、時短への協力が得られにくくなっているとの見方を示す。
 強制力を持たせるための罰則には「私権制限」の懸念が拭えず、関係省庁と内閣法制局が協議した結果、事業者への「罰金」については憲法との整合性が保たれるとの認識で一致した。政府は併せて、感染症法改正により各保健所による感染ルート追跡のための「積極的疫学調査」を拒否した人への罰則も検討したが、個人に対する措置は「合憲性に疑義がある」との指摘が法制局から出て、今回の改正では見送りとなりそうだ。
 罰則規定には事業者からの反発も予想されるため、与党内は「議論はまとまっていない」(公明党関係者)とされ、野党の立場もまちまち。与野党が特措法改正案の内容で早期に合意できる見通しは立っていない。
 首相は24日の講演で、時短要請への罰則について、分科会の慎重論にも触れながら「必要ではないか」と明言した。内閣支持率が急落する背景に、政府の新型コロナ対策に対する不満があることを意識した発言とみられる。ただ、目に見える効果が上げられなければさらなる批判も予想され、まずは実効性が期待できる改正案取りまとめに手腕を求められる。 (C)時事通信社