札幌市の繁華街ススキノで商戦の舞台を夜から昼に移す飲食店が増えつつある。新型コロナウイルス感染が拡大した2020年、業界には甚大な影響が及んだ。苦境に立つ「ネオン街」は生き残りを懸け、知恵を絞り、早期収束を願っている。
 札幌駅を南へ約1.5キロ。東京・歌舞伎町、福岡・中洲に並び「日本三大歓楽街」と称されるススキノの街が広がる。コロナ禍前は約3800の飲食店があったとされ、無数の看板で「ネオン焼けする」とも言われた。
 昨年、コロナ対策に伴う外出自粛や休業要請などの影響を受け、ススキノの飲食業界内では300軒程度が休廃業したとも伝わる。そんな中、飲食店を経営する鈴木慎也さん(38)は、客足が減った店舗を日中の仕事用などに貸し出す事業を始めた。
 月1万円の会員制で借り手を募ると、昨年12月時点で約90人が集まった。コロナで店の売り上げは半減したが、鈴木さんは「成功すれば、同じように悩んでいる事業者の勇気になる」と話す。
 ワインバーの「ヴィラージュ」は、ランチ営業のほか定額制のテークアウト事業にも進出。料理長の谷越洸輔さん(25)は「コロナが落ち着けば外食に行きたい気持ちも爆発するだろうから」と商品開発に励む。
 これまで考案したメニューはピザなど約50種類に上る。「疲れたという思いもあるが、楽しさを見つけながらやっていきたい」と笑顔で語る。
 不安も聞かれる。ススキノを中心にスナックやバーを経営する田中裕美子さん(62)は「知り合いと話しても店を閉める話ばかり。恐ろしい1年だった」と振り返る。売り上げは例年の3割にも満たなかったという。
 従業員はアルバイトを含め180人ほどで、昼と夜の仕事を掛け持ちして子どもの養育費を稼ぐ女性も。対面での接客が難しい今は「スマートフォン越しにリモート営業する子もいる」と話す。
 この道43年の田中さんは「ススキノが(客にとって)遠い存在になるんじゃないか」とも感じる。それでも「私たちが頑張って魅力ある街にしないとお客さまは戻らない。もっと努力して勉強したい」と気丈に語った。 (C)時事通信社