【ニューヨーク時事】新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年は世界中の製薬企業がワクチン開発競争を繰り広げた。コロナ禍収束のカギとなるワクチンに高い期待が集まる一方、製薬企業がワクチン販売で過大な利益を得る可能性には一部で批判も出ている。
 米デューク大学によれば、20年12月時点で各国が確保したコロナワクチンは、交渉中や仮押さえ分も含めると計121億回分に上る。価格は各国と製薬企業との契約によって異なり、米国では、既に接種が始まったファイザー製が1回約20ドル(約2100円)、モデルナ製が同32~37ドル。日本や欧州連合(EU)なども複数社から供給を受ける見通しで、ワクチン開発に成功した製薬各社は巨額の売り上げが見込まれる。
 ただ、ワクチンは「公共財」(グテレス国連事務総長)との考えから、手頃な価格での供給を求める声は根強い。国際医療援助団体「国境なき医師団」は「いかなる企業も、パンデミック(世界的流行)の裏で暴利を得るべきではない」と主張。購買力に乏しい途上国にもワクチンが広く行き渡るよう、原価での販売を求めている。
 一方で、製薬企業の利益を保証することが、医薬品開発の促進につながる面もある。薬価などを調査する米団体「臨床経済的評価研究所(ICER)」は、米国では政府による薬価統制機能がなく、薬を高額で販売できることが、民間企業の研究開発意欲を高めている面もあると指摘する。
 また、コロナワクチンによる利益が長続きしない可能性もある。ワクチンの効果は持続期間など不明点も多く、将来的な製造・販売量も定かでない。世界保健機関(WHO)によれば、臨床試験(治験)中のワクチン候補は昨年末時点で60種類。今後次々に競合品が登場し、採算が悪化するリスクもある。米金融情報会社S&Pグローバルは、21年中はコロナワクチンがファイザーなどの業績に大きく貢献するものの、「利益は短期的なものになりそう」と予想。開発には公的資金も投じられており、製薬企業がコロナワクチンで得る利益には当面厳しい目が向けられることになりそうだ。 (C)時事通信社