新型コロナウイルスのワクチンの入手をめぐって国家間の格差が生まれている。ワクチンの大半を高所得国が買い占め、低所得国が入手できなくなるとの懸念が広がっており、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「世界は破滅的な道徳的失敗の瀬戸際にある」と警鐘を鳴らす。
 米デューク大によると、今月中旬時点で、世界で計約70億回分のワクチンが購入されたが、全人口のわずか16%しか占めない高所得国がそのうち60%を購入。中でも、カナダは人口の5倍以上、英国は約3倍、米国と欧州連合(EU)は約2倍のワクチンを確保しているという。
 スワミナサンWHO主任科学者は、世界全体にワクチンが普及するには時間がかかるとして、感染が広がりにくくなる「集団免疫」は「2021年中にはいかなる水準でも獲得できない」と断言した。
 WHOなどの主導で、ワクチンを共同購入し公平に分配する国際的枠組み「COVAX」が昨年4月に発足した。日本を含む190カ国以上が参加し、低・中所得国92カ国には今年中に計18億回分のワクチン配布を目指している。
 ただ、こうした国への供給は2月にならないと始まらない上、資金調達も課題だ。テドロス氏は「一部の国と製薬会社は、公平なアクセスをうたいながら、COVAXを迂回(うかい)して直接契約を優先させ、(ワクチンの)価格をつり上げている」と懸念を示した。
 一方、ワクチンが入手困難な状況を背景に、中国やロシア、インドは、自国産ワクチンをてこに影響力拡大を図る「ワクチン外交」を展開している。
 特に中国は、王毅外相が今月、アフリカや東南アジア諸国を歴訪し、ワクチン供与に向けた支援を約束するなど積極的だ。既にアラブ首長国連邦(UAE)、インドネシア、トルコ、ブラジルなどでは中国製ワクチンの接種が始まっている。中国外務省の華春瑩報道局長は20日の記者会見で「40カ国以上から輸入申し込みが来ている」と明らかにした。 (C)時事通信社