【ブリュッセル時事】新型コロナウイルスワクチンの供給遅延をめぐる欧州連合(EU)と英製薬大手アストラゼネカの対立が深刻化している。焦るEU側は供給契約を守らせるため、英国で製造する同社ワクチンをEUに回すよう要求。EUを完全離脱した英との摩擦が懸念され始めた。
 「最大限努力するが契約での約束はできないと伝えていた」。アストラ社のソリオ最高経営責任者(CEO)は26日掲載の一部欧州紙(電子版)のインタビューで、供給遅延は契約違反ではないと主張。EU側の反応を「感情的だ」と切り捨てた。
 これに対し、EUのキリアキデス欧州委員(保健担当)は27日、「供給義務がないとの見解は受け入れられない」とソリオ氏を非難。特に、同氏が生産性の高い英工場産ワクチンはEUより3カ月早く契約した英に優先供給されるとの認識を示したことに反発し、「英工場も合意の一部だ」と英産ワクチンによる遅延の穴埋めを迫った。両者の協議はこの日も物別れに終わった。
 アストラ社は昨年8月、最大4億回分を供給する契約をEUと締結。ワクチンは今月29日にもEUで承認される見込みだ。ただ、同社は先週、ベルギー工場の生産量の問題で3月までの供給が予定量を大幅に下回ると通告。納得できない欧州委はEU分を他国に回していると疑い、域外輸出に事前報告義務を課す規制導入を表明した。
 EUの強硬姿勢の背景には、英米に後れを取る接種ペースの鈍さがある。供給遅延は米製薬大手ファイザーでも起きており、EU各国のいら立ちは高まっている。
 一方、ジョンソン英首相は27日、「供給に自信がある」と発言。深入りは避けたが、変異種が猛威を振るう中、供給減を避けたいのは英も同様だ。EUの規制でベルギー産のファイザー製ワクチン輸入が滞る恐れも指摘され、英EUの衝突は激化しそうだ。 (C)時事通信社