【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから、30日で1年。未曽有の危機を通し、米中など主要加盟国には強い態度を取れないWHOの限界が露呈した。その反省から、権限強化に向けた改革の議論が進む兆しが出ている。
 「WHOの強化・改革に、他国と協力し建設的に取り組む」。21日のWHO執行理事会で、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が訴えた。トランプ前大統領が決めたWHO脱退を撤回して内部から変革を目指す姿勢を示した。他の加盟国からも賛同の声が相次いだ。
 改革機運の背景の一つは、中国の情報公開への根強い不満だ。2019年12月31日にWHO中国事務所が武漢市での「原因不明の肺炎」の報告を受けてから、中国当局が「人・人感染」を認めるのに20日を要し、WHOの緊急事態宣言はさらにその10日後にずれ込んだ。
 当局の情報統制で、WHO中国事務所による情報収集が機能しなかったと憂慮する声は多い。WHOや国際社会のコロナ対応を検証する独立パネル(委員会)も今月18日発表の報告書で、初期段階での情報伝達の不備を指摘した。
 こうした反省から、欧州連合(EU)は昨年10月にまとめた改革案で、WHO現地事務所の強化などを提言。また、インドも改革案を発表。緊急事態宣言の判断でWHO事務局長の裁量を大きくし、より迅速な決定ができるようにすることを求めた。
 ただ、こうした改革に中国がどこまで協力するかは不透明だ。
 また、トランプ氏が米国の資金拠出停止でWHOに圧力をかけたことから、財源面で独立性を強めるべきだと求める声も強い。WHOの例年の予算のうち、使途に関しWHOの裁量が大きく、加盟国が人口などに応じ拠出する「負担金」は、1~2割程度。約7割は、加盟国や慈善団体などが使途を決めて出す「寄付金」だ。
 こうした「ひも付き財源」が独立性を損ねるという指摘は根強い。WHOのテドロス事務局長は「負担金の割合を増やすべきだ」と訴えている。 (C)時事通信社