【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)で、ロシアが開発した新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」受け入れ容認の機運が出てきた。安全性への懸念やロシアの影響力拡大が警戒されてきたが、予防効果の確認やワクチン接種の遅れへの焦りを背景に各国が触手を伸ばしつつある。
 「EUでは全てのワクチンを歓迎する」。ドイツのメルケル首相は2日、独メディアに欧州医薬品庁(EMA)の承認判断があればスプートニクも利用する姿勢を示した。メルケル氏は、ロシアのプーチン大統領と先月電話会談し、EUでの認可に向けた協力を申し出たという。
 スペインのダリアス保健相も3日、「EMAが承認すれば、どんなワクチンでも心の底から歓迎する」と強調した。
 スプートニク開発に携わったロシアの政府系ファンドは既にEMAに審査を申請。AFP通信によると、独企業とのEU域内での共同生産も模索しているという。
 EUは加盟国間の争奪戦を避け公平にワクチンを確保するため、欧州委員会が代表して製薬各社と交渉。対象を域内製造のワクチンに限り、6種類計約23億回分の事前供給契約を結んでいる。
 このうち3種類が承認済みだが、供給遅れも重なり接種ペースは英米に比べ鈍く、各国の不満は高まっている。ハンガリーが先月、スプートニクを単独承認し輸入契約を交わすなど、EUの結束には乱れも生じている。
 こうした中、英医学誌ランセットが2日、最終段階の臨床試験(治験)で91.6%の感染予防効果が確認されたと掲載。安全性への懸念が取り除かれつつあることで、EU全体での容認に傾き始めた格好だ。
 一方、EUは毒殺未遂に遭った反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の拘束でロシアを非難。加盟国からは制裁を求める声も上がっている。実利重視でのロシア接近は今後、EU内で物議を醸す可能性もある。 (C)時事通信社