2021年春闘が今月中旬から本格化する。新型コロナウイルス感染拡大が企業業績に大きな影響を与えており、賃上げの勢いをどこまで維持できるかが焦点だ。労働組合の中央組織、連合の神津里季生会長と、経営側の指針をまとめた経団連の大橋徹二副会長(コマツ会長)に話を聞いた。
 ◇賃上げで経済好循環を=神津連合会長
 ―新型コロナウイルス禍の今年も2%程度のベースアップ(ベア)要求を掲げた。
 14年から積み上げてきたデフレ脱却と経済の好循環に向けた賃上げの流れを継続しないといけない。ここで途切れては14年以来の努力が水泡に帰す。再びデフレになると、脱却には相当の年月とエネルギーが必要。定期昇給を前提にした上で全体を底上げしていく。賃上げの流れの定着には2%の旗を掲げることが不可欠だ。
 ―経団連は従業員一律の賃上げに否定的だ。
 この20年間、日本と他の先進国の間の賃金水準は大きく乖離(かいり)した。追い付くには2%でも全然足りない。経団連は日本全体のことを考えてほしい。
 ―業績が厳しい企業もある。
 コロナの影響は業種・業態で偏っており、雇用維持が最優先の課題の企業がある一方、需要が増え人手不足の企業もある。賃上げできるところは対応を取ってほしい。本当に厳しいところと、実際には賃上げできるところが(コロナ禍を言い訳に)ない交ぜになってはいけない。
 ―春闘のリード役とされるトヨタ自動車労組はベア要求の有無を公表しない。
 どこまでが定昇でどこからがベアか区分けをやめるということ。一方、(トヨタ系列の部品メーカーなどの労組が加盟する)全トヨタ労働組合連合会の中で、トヨタの回答を上回ることはできないという文化が払拭(ふっしょく)されてきた。(賃金底上げの観点から)見ておく必要がある。
 ◇一律賃上げ「難しい」=大橋経団連副会長
 ―連合は2%程度のベースアップ(ベア)を求めている。
 賃金に関して経営者もモメンタム(勢い)を維持したいという点はぶれていない。ただ、新型コロナウイルスの影響は業種、個社にもよるが、かなり大きくなっている。一律(賃上げ)はなかなか難しいのではないか。経団連の経営労働政策特別委員会報告では、業績の良いところはベアも選択肢だとしている。そうでない企業は事業の存続と雇用を守るのが最優先で、労使で真摯(しんし)な議論を重ねてほしい。
 ―賃上げのモメンタム維持はどう実現するのか。
 コロナの影響は(企業によって)あまりにも違いがあるため、モメンタムを全体平均で議論できない。厳しい企業でも、何とかこれだけは報いたいということも出てくる。そこがモメンタムを感じてもらうところだ。まずは事業存続、さらにコロナ後の成長を協議しながら今年できることは何かを議論する。
 ―テレワークの議論は。
 テレワークは今後の働き方の選択肢だ。テレワークで行う業務、リアルで行った方がいい業務の自社のミックス度合いを考えてほしい。
 ―コロナで労使の隔たりは大きくなったか。
 連合の主張は経団連とほとんど一緒だ。賃金の要求(の考え方)は違うが、とことん議論すると収れんすると思う。コロナという北風が吹いて労使は近くなった。自分の会社の強みや弱みを議論する良い機会になるのではないか。 (C)時事通信社