政府が新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ「切り札」と位置付けるワクチンをめぐり、東京都練馬区は1月末、かかりつけ医での個別接種を中心とする計画をまとめた。4月にも始まる高齢者向けから実施する。計画は「早くて近くて安心」がコンセプトで、「練馬区モデル」として全国に広まりつつあるが、厳格に温度管理した上で配送できるかといった課題もある。
 昨年12月以降、区と区医師会は集団接種を検討したものの、医師の確保や会場の手配が難しく、「集団接種で全て賄うのは無理」と判断。身近で既往歴を把握し、副反応にも対応できるかかりつけ医での個別接種の導入を決めた。
 区内の65歳以上の高齢者は約16万人。この約65%(10万4000人)が6週間で2回接種する体制を組み、うち6割超を区内約250カ所の診療所で受け持つ。高齢者はインフルエンザ予防接種と同様に診療所に予約。診療所は必要な分を区に報告する。
 区は超低温管理が必要な米ファイザー製ワクチンを想定。厚生労働省は当初「小分け配送は原則3施設まで」と説明していた。だが、区が問い合わせたところ、「50~70箱の小分け配送」も認められたため、民間に委託し、4カ所の区立施設から全ての診療所に小分けにして送ることにした。
 ワクチンは保冷ボックスに詰め、小分けから配送までを3時間以内に行う。診療所では冷蔵保管し、5日以内に使い切る。
 区医師会幹部は「かかりつけ医はコロナ感染者の受け入れは難しいが、ワクチン接種であれば協力できる」と強調。超低温・迅速配送は前例がないものの、「やるしかない」と腹をくくる。
 ◇割れる判断
 練馬区と同様、福岡市は診療所での個別接種を中心とし、集団接種や高齢者施設への出張接種などと組み合わせる。高島宗一郎市長は今月1日の記者会見で「かかりつけ医であれば(接種者の)病歴や持病を熟知している」と語った。京都市の門川大作市長も2日、記者団に対し、練馬区モデルを引き合いに「可能な限りそういった取り組みができるよう医師会と連携したい」と述べた。
 もっとも、市町村により事情はさまざまで、判断も異なる。山口県内では、周防大島町が全ての高齢者(約8300人)を11カ所の医療機関で個別接種する方針。担当者は「東西に長い島で集落が点在し、集落ごとに会場に集めるのは難しいため」と話す。これに対し、和木町は町内に診療所が二つしかなく、通常診療に支障が出る恐れがあることから、当面集団接種のみとする。 (C)時事通信社