新型コロナウイルス対策として10都府県で発令中の緊急事態宣言について、菅義偉首相は12日、当面継続する方針を決めた。新規感染者数は目に見えて減少しているものの、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する状況に改善がみられないためだ。目前に迫るワクチン接種も医療現場に新たな負担となることが予想され、首相は医療重視を基本に対応する方針だ。
 西村康稔経済再生担当相は12日の衆院議院運営委員会で、当初検討した一部地域での宣言解除を見送る理由を、「感染者数が減っている中で、病院、病床は引き続き逼迫している」と説明した。
 かねて経済対策を重視してきた首相は、宣言の1カ月延長を決めた2日の記者会見でも「状況が改善された都府県は期限を待たず、順次解除する」と先行解除に積極姿勢を示した。関係者によると、感染者数が改善傾向にある愛知、岐阜、福岡3県を候補に、先行解除の可能性をぎりぎりまで探る意向だったという。
 しかし、この3県でも、医療提供体制は依然厳しい状況だ。内閣官房の資料によると、多くの地域で病床使用率は宣言対象の「ステージ4」相当。とりわけ、重症患者数の増加は感染者増よりも遅れて顕在化するため、自治体側も解除に慎重だった。首相周辺は「官邸だけが突っ走るわけにはいかない」と自戒する。
 先行解除に慎重にならざるを得ない背景には、政府が感染抑止の「切り札」と位置付けるワクチン接種が17日にも始まることがある。コロナ対応に追われる医療機関のさらなる「負荷」(西村担当相)になるとの指摘があり、専門家は「安易に解除しないでほしい」と慎重対応を促している。
 解除した上で、13日施行の改正特別措置法で定めた「まん延防止等重点措置」に基づき、飲食店への営業時間短縮要請など、効果が期待できる対策を継続する案もあった。しかし、解除を急いで同措置に移行するよりは、十分な効果が上がるまで宣言を継続した方が得策と判断。既に解除した栃木県への適用も見送ることにした。
 解除するかどうかの判断は来週以降に仕切り直しとなるが、解除後に「緩み」が生じて感染再拡大を招く懸念も拭えない。政府内では「3月7日の期限まで、じっくり対策を実施すればいい」(関係者)と、腰を据えた取り組みを求める声が勢いを得つつある。 (C)時事通信社