新型コロナウイルスへの対策強化で、入院や疫学調査を拒んだ場合の過料を導入した改正感染症法が13日に施行された。罰則の抑止力に期待する声もあるが、実務を担う保健所職員からは「対応が間に合わない」「必要なケースが想定できない」と戸惑う声も漏れる。
 法案成立から施行まで10日しかなく、国がオンライン説明会を開いたのは3日前。時間や内容も不十分で、参加者からは「よく分からなかった」と不満が聞かれた。神奈川県内の保健所担当者は「資料を読み込み、職員の研修もしないと。急ごしらえでは適用できない。正直気が重い」とこぼす。業務も多忙で、計画すら立たないという。
 新制度では感染拡大を防ぐため、入院要請を拒んだり、病院から逃走したりすれば50万円以下の過料を科す。ただ、東京都内の保健所の課長は「入院を拒否されたことはなく、罰則が必要な状況を想像できない。むしろ『なぜできない』という苦情ばかりだ」と指摘。「病床を確保し、入院できる環境づくりが先では」と注文を付ける。
 感染経路を調べる調査を拒んだり、虚偽の説明をしたりしても30万円以下の過料となるが、都内の別の保健所からは「調査にうそをつかれても、確かめる手段も人手もない」と実効性をとがめる声が上がった。
 罰則導入により、裁判所に提出する資料作成など新たに生じる事務も負担になる。体制や責任の重さへの懸念は強く、兵庫県内の保健所担当者は「手続きが済む頃には、回復して入院させる必要性もなくなっている。手間と成果が見合わない」と疑問を呈した。
 感染者が一時行方不明になる事案があった高知県の担当者は「罰則は抑止にはなる」と心理的効果を期待。一方、大阪府内の保健所職員は「はなから罰則を振りかざせば、かえって協力が得られなくなる」とマイナス面も口にした。
 札幌市保健所の山口亮感染症担当部長は「説明のツールにはなるが、抜かずの宝刀だ」とみる。職員にも「信頼構築が大事で、罰則を前面に出し、脅しに使ってはいけない」と指導しているという。山口部長は「罰則を科すケースは多くないだろう。適用が目的の法律ではない」と強調した。 (C)時事通信社