【ロンドン時事】世界貿易機関(WTO)の次期事務局長に、ナイジェリア出身のヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏が選出された。しかし、米中貿易摩擦が激化する中、足元では新型コロナウイルスワクチンの囲い込みの動きも広がる。自由貿易体制の再構築に向け、3月1日の就任直後から正念場を迎える。
 オコンジョイウェアラ氏は15日の記者会見で「最優先課題は新型コロナ対応だ。短期的にも長期的にも、WTOに何ができるかを示す機会になるだろう」と語った。
 試金石となるのは新型コロナワクチンや医療器具だ。WTOと国連の共同機関、国際貿易センターの調査によると、世界の約100カ国・地域でこれらの輸出制限が導入されている。「ワクチン・ナショナリズム」が感染収束に向けた国際協調の足かせになるとの懸念が強まっている。
 トランプ前米政権時代に激化した米中貿易摩擦は、バイデン政権下でも収まる兆しは見えないまま。米国と欧州連合(EU)の対立や、日韓のような複雑な歴史的背景がある貿易摩擦もくすぶる。
 一方で、最終審に当たる上級委員会は米国の反対で委員が不在となり、機能不全に陥っている。WTOの組織改革を求める声も強く、年内に開催予定のWTO閣僚級会合で改革の道筋を示す必要がある。
 オコンジョイウェアラ氏は世界銀行のナンバー2を務めた国際的知名度に加え、ナイジェリア財務相時代に先進国との債務削減交渉をまとめた手腕にも定評がある。ただ、WTOでは全会一致が原則。「何も決められない」(日本の閣僚経験者)とやゆされるWTOの立て直しは困難を極めそうだ。 (C)時事通信社