【ニューデリー時事】ワクチン製造大国として知られるインドが、自国製新型コロナウイルスワクチンの近隣国などへの無償提供を進め、存在感を示している。インド周辺では、巨大経済圏構想「一帯一路」を利用して浸透を図ってきた中国が、自国産ワクチン供給による影響力強化を図っており、両国が「ワクチン外交」で対抗し合う構図となっている。
 インドのジャイシャンカル外相は20日、訪問先のモルディブでシャヒド外相と会談。「モルディブ政府と国民へのインドからの贈り物として、新型コロナワクチン10万回分を運んで来た」と友好関係を強調した。
 インド外務省によると、モルディブには1月中に既に10万回分を無償提供しており、計20万回分となった。このほか、今月12日時点でバングラデシュに200万回分、ミャンマーに170万回分、ネパールに100万回分、スリランカとアフガニスタンにいずれも50万回分を贈った。各国への無償提供分は計647万回分に上る。
 インドが提供したのは、英製薬大手アストラゼネカのワクチンを自国でライセンス生産したもの。インドは、日頃から世界で流通するワクチンの6割を製造する「ワクチン大国」として知られる。新型コロナワクチンについても、年明け早々に使用を承認し、商業輸出とともに無償提供に乗り出した。
 インド外務省は、提供の意図について「近隣国重視の外交」(スリバスタバ報道官)の一環と説明する。一方、近隣国には、インドと未画定の国境をめぐって争う中国も、自国産ワクチンの供給を進めている。
 バングラデシュは、中国産ワクチンの治験費用負担で中国と折り合わず、インドの無償ワクチンを受け入れ、購入も進めている。ネパールもインド製ワクチンを受け取り、購入についても交渉中だ。
 ネパールでは、インド製ワクチンの接種開始後、中国も50万回分の無償提供を発表。また、インド製の接種を進めるミャンマーでは、1月に中国の王毅外相が訪問、30万回分の提供を約束した。中印両国の「ワクチン外交」をめぐる駆け引きは当面続きそうだ。 (C)時事通信社