【クアラルンプール時事】マレーシアのムヒディン首相(73)が政権を獲得してから3月1日で1年となる。総選挙を経ずに当時の最大野党と組んで政権交代したため、権力基盤は極めて脆弱(ぜいじゃく)。現在は、国王が新型コロナウイルス対策で発令した非常事態宣言下で与野党の批判勢力を抑え込み、権力を維持している。同宣言が終了する8月以降には下院解散・総選挙が避けられないとの見方がある。
 ムヒディン政権は発足以来、野党から「正統性がない裏口政権だ」と攻撃を受けている。2018年の総選挙で下野した統一マレー国民組織(UMNO)と組んでマハティール前首相(95)から政権を奪取したためだ。
 しかし、ムヒディン氏は閣僚ポストの配分などでUMNOからも恨みを買った。昨年9月には、UMNO重鎮で汚職事件を抱えるナジブ元首相(67)らが、野党指導者アンワル元副首相(73)を次期首相に推す倒閣運動が発覚した。
 コロナ禍にも苦しめられた。政権発足直後から全土を1カ月半にわたって封鎖した結果、国内経済が大打撃を受け、20年の経済成長率は前年比5.6%減に落ち込んだ。昨夏にいったん抑え込んだコロナ感染も、昨秋以降に再拡大してしまった。
 窮地に陥ったムヒディン氏の進言に基づき、アブドラ国王は8月1日までコロナ対策名目の非常事態宣言を発令。議会も原則停止されたため、多くの国民から「権力維持が目的だ」と非難にさらされている。
 ムヒディン氏は、UMNO所属議員の離反で既に下院の過半数支持を失っているもようだ。政権の求心力が回復しなければ、コロナ収束後に開かれる下院で不信任投票が可決され、解散総選挙となる公算が大きい。 (C)時事通信社