東日本大震災から10年を迎えるのを前に、自民党の安倍晋三前首相は3日までに、時事通信のインタビューに応じた。復興に向けた安倍政権の取り組みでは「一定の役割を果たせた」と強調。首相在任中に「復興五輪」を掲げ招致した東京五輪・パラリンピックに関しては、新型コロナウイルスを克服した上で開催が実現できれば「五輪の歴史に残る大会となる」と期待感を示した。
 ―発生当時は野党議員だった。
 当時、自民党の谷垣禎一総裁は政府に全面的に協力した。ただ、民主党は政権運営に十分慣れておらず、菅直人首相は原子力緊急事態宣言を直ちに出すべきだったのに遅れた。現場の要望を聞くネットワークもなく、行政を動かす能力に欠けていたと言わざるを得ない。(自民党にとって)それが政権奪還の原点だ。
 ―首相再登板後、復興にどう取り組んだか。
 「閣僚全員が復興相と思え」と指示して縦割りを排し、現場主義を徹底した。大変だったのは東京電力福島第1原発の廃炉への取り組み、避難者の帰還に向けた道筋、高台移転のための土地買い取りなど。復興の足かせとなった風評被害の払拭(ふっしょく)も課題だった。
 ―安倍政権下で復興はどこまで進んだか。
 高台移転や災害公営住宅など住まいの整備、帰還困難区域を除く地域の避難指示解除、道路や鉄道などの交通インフラ復旧は進んだ。製造品の出荷額や観光客数も震災前より増え、一定の役割を果たせたと思う。
 ―残された課題は。
 心のケアが必要な方々がまだたくさんおられ、しっかり対応しなければならない。原子力災害地域の住民帰還に向けた環境整備や、新たな産業にも力を入れていくことが大切だ。
 ―福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の対処は。
 先送りできない課題だと当時首相として認識していた。風評被害もあるので、政府が適切な時期に責任を持って判断し、安全性など含めて国際的にも発信と説明をしてもらいたい。
 ―首都直下型地震への備えは十分か。
 耐震化は相当進んできた。東日本大震災の経験を生かし、安倍政権時に首都直下地震緊急対策推進基本計画を策定した。想定される死者数半減などの目標に向け、防災・減災を進めてほしい。
 ―追悼式を今年でやめると決断した背景は。
 忘れ得ぬ出来事であることは間違いないし、これを教訓に同じ悲劇を繰り返してはならない。だが、追悼式をどこかの段階では終了しなければならない中で、安倍政権で判断した。
 ―「復興五輪」への思いは。
 ブエノスアイレスの国際オリンピック委員会(IOC)総会で行った東京招致へのスピーチで、「復興した姿を皆さんに見ていただく五輪にしたい」と話し、その趣旨に沿う形で復興は進んできた。復興五輪であると同時に、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催できれば、五輪の歴史に残る大会となる。 (C)時事通信社