大規模災害が起きると、トイレの確保が大きな問題となる。発生から10年を迎える東日本大震災でも、断水で水洗式が使えなくなり混乱が起きた。自治体は避難所にマンホール型トイレを設置したり、し尿を固める凝固剤を備蓄したりして対策を進めるが、専門家は「まだ遅れている。快適なトイレはぜいたくではなく、命を守るために必要だ」と訴えている。
 災害時のトイレが注目されたきっかけは、1995年の阪神大震災だ。甚大な被害を受けた神戸市では道路の寸断で仮設トイレの設置に手間取った上、バキューム車が足りず、し尿のくみ取りも滞った。使用不能になるトイレが続出し、「トイレパニック」という言葉も生まれた。
 被災者支援に取り組んだNPO法人理事長の中村順子さん(73)=同市=は「どこのトイレもすぐ『山盛り』になり、避難所の校庭に穴を掘ってする人もいた。段差のある仮設トイレは高齢者や障害者には使いづらく、一番の悩みの種だった」と振り返る。
 2011年の東日本大震災や16年の熊本地震でも、仮設トイレが足りない、汚いといった声が被災者から上がった。感染症の集団発生のほか、トイレに行く回数を減らすため水分補給を控え、エコノミークラス症候群になる危険性も指摘された。
 各地の自治体は対策を進めている。神戸市では避難所となる小中学校で、下水管と接続する配管を地中に埋め、災害時はふたを開けて便器や囲いを設置して使うマンホールトイレを290基整備。組み立てトイレ510基と凝固剤約80万個も備蓄している。
 宮城県東松島市もマンホールトイレを137基に増設。仙台市は組み立てトイレと袋状の携帯トイレ、福島市では凝固剤を中心に備蓄している。兵庫県南あわじ市など車いすに対応した車載トイレを導入する自治体も増えている。
 内閣府は16年、避難所のトイレに関するガイドラインを策定。確保すべきトイレの数や種類を示し、市町村に「確保・管理計画」を作成するよう求めたが、進捗(しんちょく)には差があるとみられる。
 NPO法人「日本トイレ研究所」(東京)の加藤篤代表(48)は「複数種類のトイレを組み合わせることが重要だ」と指摘。その上で「実際に機能させるには、備蓄などハードだけでなく、具体的な計画を立てて責任者を決めておく必要がある」と話している。 (C)時事通信社