政府・与党は9日に審議入りしたデジタル改革関連5法案について、4月中の成立を目指す。参院で次年度予算案の質疑が終わっていない段階で、年度内成立が必要な「日切れ法案」ではない大型法案の審議を衆院で始めるのは異例。菅義偉首相には9月のデジタル庁発足に早期に道筋を付け、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、いつでも衆院解散に踏み切れる環境を整えておく狙いがあるとの見方が出ている。
 「デジタル社会実現へ関連法案の成立に全力を尽くす」。首相は9日の衆院本会議でこう意気込みを語った。
 与党は首相の意をくみ、関連法案について3月末から4月初旬に衆院を通過させ、同月末からの大型連休前に成立させる段取りを描く。デジタル庁設置は首相の目玉政策。「関連法案成立まで衆院解散・総選挙はない」というのは与野党共通の見立てだ。
 衆院選の時期をめぐり、ある政府関係者は「7月23日開幕の東京五輪前とする選択肢も首相の視野にある」と語る。
 こうした観測が浮上するのは、「本命」とされてきた秋にコロナ感染が収束しているか見通せないためだ。首相が感染拡大防止の「決め手」とするワクチンが全国民に行き渡る時期は依然として不透明。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は終息に「2~3年」かかるとの見解を示す。
 今後の変異ウイルスの広がりも読めない。秋に「第4波」が襲来し、政権の対応に再び世論の批判が向かう可能性は残る。
 感染者数と内閣支持率の増減は連動しているというのが政界一般の見方だ。1月の緊急事態宣言再発令以降の感染者数の減少傾向を反映してか、最近は支持率回復の兆しが出ていることも「五輪前」の観測を補強する。
 自民党関係者は、首相の党総裁任期が切れる9月末が近づけば「党内に不穏な動きも出てくる。秋まで引っ張るリスクは大きい」と指摘。7月4日投開票の東京都議選との「ダブル選も手だ」と語った。解散の「フリーハンド」を確保することは党内の引き締めに役立つ、との考えも首相周辺にはある。
 もっとも、感染状況が当面落ち着いている保証はないとして、早期の衆院選は難しいとみる向きが政府・与党になお多い。閣僚の一人は「現状でも解散したら非難の嵐になる」との認識を示し、自民党中堅は「解散に踏み切った後、投開票までに感染者が増えたら大敗だ」と予測した。 (C)時事通信社