今夏の東京五輪・パラリンピックをめぐり、政府、東京都、大会組織委員会が海外からの一般観客の受け入れを見送る方針を固めたのは、新型コロナウイルスの感染収束が世界的になお見通せない中、あくまで開催を優先したためだ。しかし、この結果、五輪を機に激減したインバウンド(訪日外国人旅行者)を呼び込み、経済再生の足掛かりにするという政権のシナリオは崩れた。
 菅義偉首相は政権発足当初から、五輪を経済再生の起爆剤として期待する姿勢を示していた。昨年11月に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と会談した際は、国内外を問わず「観客入りの開催」実現に意欲を隠さなかった。
 一方、新型コロナ感染は収束するどころか、年が明けても海外を中心に新たに変異ウイルスが拡大。政権は全世界からの外国人の新規入国を停止するなど水際対策の強化を余儀なくされた。
 五輪をきっかけに海外から観客を受け入れれば国内で感染が再拡大し、政権批判につながる懸念もあった。組織委関係者は「大会の安心感につながる」と歓迎する。
 ただ、海外からの一般観客の受け入れを見送った場合でも、五輪選手やコーチ、スポンサーなど数万人は入国する見通し。政府は感染防止対策の徹底に万全を期す方針だ。
 政権が開催にこだわるのは、首相が大会を「新型コロナに打ち勝った証し」と説明してきたこともある。中止に追い込まれればコロナ対策の「失敗」を事実上認めたことになりかねないとの事情も透ける。 (C)時事通信社