【ロンドン時事】東京電力福島第1原発事故から10年を迎えるのを前に、英科学サイト「サイエンス・メディア・センター」は10日、原発事故の影響を分析した科学者の見解を掲載した。マンチェスター大学のリチャード・ウェイクフォード教授は「幸いなことに、一般市民が受けた放射線量は1986年の旧ソ連チェルノブイリ事故からは程遠いものだった」と指摘した。
 同教授は「放射性ヨウ素の摂取が限定的だったのは、地元の牛乳の供給禁止などの適切な対応によるものだ」と称賛。「チェルノブイリ周辺で見られた小児甲状腺がんの多発は、今回繰り返されないだろう」と総括した。
 一方、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジェラルディン・トーマス教授は「被ばくによる物理的な影響よりも、被ばくした人としていない人の双方への心理的影響の方がはるかに大きい」と分析。ソーシャルメディアで広がった非科学的な「意見」による風評被害などに懸念を示した。
 原発規制をめぐっては、同カレッジのローレンス・ウィリアムズ教授が「当時の原子力安全規制当局が独立していなかったことが事故の主因」と結論付けた。その上で「独立こそが実効性ある原子力安全規制の基礎であり、それを忘れたから危機に陥った」と批判した。
 ポーツマス大学のジム・スミス教授は「驚くべきことに、事故の結果で最も壊滅的だったのは気候変動への影響だ」と強調。事故後にドイツが原発から石炭火力発電に移行したことを挙げ、「大気汚染の増加と余分な二酸化炭素の排出で、年間1000人以上の人命に影響を与えた」と語った。 (C)時事通信社