新型コロナウイルスの感染拡大で離職や収入減を余儀なくされた市民が、特殊詐欺の被害防止に一役買っている。兵庫県警から業務を請け負った警備会社が生活困窮者を採用。現金自動預払機(ATM)での声掛け業務などに当たっており、県警幹部は「コロナでの失業と詐欺対策の二本立てだ」と胸を張る。
 「特殊詐欺が多発しているので気を付けてください」。同県西宮市の商業施設で2月上旬、青色のジャケットに黄色の腕章を着けた女性2人が、ATMコーナーの利用客に声を掛けながらチラシやティッシュを配っていた。
 県警は昨年11月、県の緊急雇用創出事業の一環で、特殊詐欺の注意喚起業務を警備会社に委託。警備会社は32人を支援員として採用し、県内各地のATMなどに派遣している。今年1月までに4件の被害を防いだという。
 県警は2月、新たにコールセンターを設置し、運営を受託した業者が困窮者10人を採用した。全国の警察が詐欺グループから押収した高齢者名簿などを使い、電話で被害に遭わないよう注意喚起している。
 いずれも雇用期間は3月末までだが、働いていたホテルのレストランが休業し、支援員に採用された神戸市の女性(54)は「ありがたい。(コロナは)今後も続くと思うので、他の仕事も提供してほしい」と話した。
 昨年、兵庫県内では1027件の特殊詐欺被害が発生。前年の約1.5倍で、特に「医療費の還付がある」などと偽ってATMを操作させる還付金詐欺は8件から288件に激増した。県警幹部は「社会的に経済情勢が悪い中、『雇用のつなぎ』ができたことはよかった。支援員らには1件でも被害を減らしてほしい」と話している。 (C)時事通信社