新型コロナウイルスで収入減となった世帯に生活費を支援する特例貸し付けをめぐり、各地の社会福祉協議会(社協)で貸し付け希望額の減額を求めたり、貸し渋ったりするケースが相次いでいることが16日、生活困窮者支援団体への取材で分かった。申請件数がコロナ流行前と比べ約170倍に激増する中、団体関係者は「現場の対応が追い付いていない」と批判している。
 貸し付けは主に低所得者が対象だが、厚生労働省は昨年3月、特例によりコロナ禍で収入が減った世帯へ対象を拡大。無利子、保証人不要で借りられるようになった。
 「約2時間半も家族の職歴などを厳しく質問され、生きた心地がしなかった」。こう語るのは、コロナ禍で仕事が減り、計60万円の貸し付けを社協に申し込んだ静岡県焼津市の40代男性。職員からは「減収分12万円しか認められない」と言われ、不服なら辞退して生活保護を申請するように勧められた。男性が「貸し付けに減収の程度は問わない」とする国が都道府県に出した事務連絡を説明すると、職員はしぶしぶ希望額の申請を受け付けたという。
 厚労省によると、年間1万件前後で横ばいだった申込件数は、特例導入後の約11カ月で170万件に激増した。全国社会福祉協議会によると、1月の緊急事態宣言再発令以降、申請ペースは加速。ただ、人手が足りず、十分な知識がない応援職員が対応せざるを得ないケースがあるほか、審査が追い付かず、貸し付けまで数カ月かかることもあるという。
 生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)には、申請時のトラブルや、貸し付け審査に落ちたとの相談が毎月約300件寄せられる。藤田孝典理事(38)は、返済能力を懸念し厳しく審査する社協があるとして、「金融機関と化しており、申請者は追い詰められている。償還期間を迎えたら返済を話し合うような運用にすべきだ」と批判する。
 厚労省は事務連絡で「必要な額を迅速に貸し付けることが重要」と制度の趣旨を説明。「機械的な貸し付け可否の判断は適切でない」と社協に対し柔軟な対応を求めている。同省生活困窮者自立支援室の担当者は「現場で誤った対応があれば、適正な運用をお願いしていく」と話している。 (C)時事通信社