電話を通じて人々のさまざまな苦悩に耳を傾けてきた「いのちの電話」。1971年10月に東京で始まり、今年で半世紀を迎える。3月は国の自殺対策強化月間。新型コロナウイルスの影響を受けつつ、きょうも悩みに向き合う。
 日本での「いのちの電話」は、夜の街に立つ女性の救済に来たドイツ人宣教師ルツ・ヘットカンプさんを中心に始まった。声を上げられずに悩んでいる人から相談を受ける手段として、欧州で始まっていた電話相談を勧め、最初の1年間で2万3828件の相談に応答。活動はその後、全国に広がった。
 2019年は2万1440件の電話を受けた。1回の相談は平均30分弱。孤独や孤立による苦しさを訴える内容が多かったという。1年半の研修後、認定を受けたボランティアの相談員が応対し、相手の名前を聞くこともない。取材に応じた女性相談員は「親しい人にも言えない悩みもある。匿名であれば安心して胸の内を話せるのではないか」と話す。
 20年は新型コロナの流行で、相談体制も影響を受けた。相談員の感染リスクを考え、深夜の相談を一時休止したが、9月からは週4日、24時間体制を復活。当初はコロナに対し漠然と不安を訴える声が多かった相談内容も、その後は給料の減少など、より具体的な相談が増えた。「9月から11月は自殺を考えているといった相談は増えた」と事務局長の郡山直さんは話す。
 課題は、相談員の減少と認知度の低下だ。約30年前は470人ほどいた相談員は現在約250人。共働き世帯の増加により、ボランティアに応募する主婦が減ったとみられる。
 高齢化は相談者側にも表れている。若い人の相談は少なく、郡山さんは認知度の低下を感じるという。それでも20年は個人からの資金的支援が増え「電話相談の最大の受け皿として、社会に必要とされている」と感じたという。「24時間体制はいのちの電話の大切な理念。一日も早く元に戻したい」。郡山さんはそう力を込めた。 (C)時事通信社