感染状況を勘案して首都圏の緊急事態宣言解除を決めた政府の判断。識者は「なぜ今なのか、根拠を示すべきだ」と求め、医療現場からは「実態を見ていない」と疑問の声が上がった。
 「感染者数が下げ止まり、『なぜ今なのか』『元のもくあみになる』と、誰もが違和感を覚えているのでは」と話すのは社会学者の西田亮介東京工業大准教授。街の様子に緩みが見られるのは事実としながらも「だからこそ解除した根拠を明確にし、今後の拡大を防ぐ道筋を示さないと不信感を生む」と強調。「続けても意味がないというなら、再延長した判断の総括も必要」と訴えた。
 政治評論家の有馬晴海氏は「東京五輪に向けた雰囲気づくり」との見方を示す。「感染状況が大きく変わらなくても、マインドだけは五輪に向けたい。聖火リレーが緊急事態宣言中というわけにはいかなかったのだろう」と、25日に迫るリレーのスタートを念頭に置いたと推し量った。
 医療現場からは「状況は何も変わっていないのに」と抗議の声が上がる。羽生総合病院(埼玉県羽生市)では病床こそ空きが出始めたが、人手のいる重症者の入院が長引き、スタッフの負担はほとんど減っていないという。高橋暁行副院長は「変異ウイルスへの対応など新たな業務も生じ、職員はずっと満足に休んでいない。病床使用率だけでなく、現場の状況を見てほしい」と要望する。
 感染者のリバウンドについては「外出が多くなり、気が緩めば絶対に増える。あっという間にまた行き詰まってしまう」と懸念。「この状況で解除するのは、感染を恐れるお年寄りにリスクを全て押し付けるようなものだ」と非難した。 (C)時事通信社