【ブリュッセル時事】英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン接種後の血栓発症例をめぐる問題は、接種の必要性とリスクをてんびんに掛ける難しい選択を欧州各国に迫った。欧州連合(EU)欧州医薬品庁(EMA)が18日に「安全」だと結論付けたことを受け、ドイツやフランスなど各国は一時停止していた接種を19日以降に順次再開。ただ、市民の懸念を払拭(ふっしょく)できるかは不透明だ。
 「私たちには死や入院を防げるワクチンがある。使う必要がある」。EMAのクック長官は記者会見でワクチンの利点を強調。「(副反応の)リスクを上回る」と訴えた。
 オーストリアでの女性看護師死亡に端を発した今回の問題で、EMAは当初から血栓の発症率の低さから接種との因果関係を示唆するものはないとの見解を繰り返してきた。しかし、欧州を中心に「予防的措置」として接種を中断する動きが各国に拡大。15日には独仏など主要国も追随した。
 一方、感染が収束せずワクチン供給不足も問題となる中での接種停止の連鎖に、専門家などから批判が噴出。科学的知見を無視した「政治的パニック」との指摘も出た。「今やめるのは無責任だ」(ベルギーのファンデンブルック保健相)と接種を続ける国もあった。
 混乱に終止符を打つためEMAは「明確に科学的な結論」(クック氏)を示し、改めてアストラ製ワクチンにお墨付きを与える必要があった。
 ただ、ごくまれに起きる深刻な血液の凝固障害との因果関係は「確実には排除できない」(同)と検証は続ける方針で、懸念が完全に消えたとは言えない。スウェーデンやノルウェー、デンマークは、接種再開にはまだ慎重姿勢を見せる。
 再開後も、今回の騒動で市民がアストラ製ワクチンを敬遠する事態も想定される。今後接種を始める日本も、リスクについての明確な方針や説明が求められそうだ。 (C)時事通信社