今夏に1年延期された東京五輪・パラリンピックは、新型コロナウイルスの感染拡大で海外からの一般観客の受け入れ断念が決まった。インバウンド(訪日外国人旅行者)による消費は2000億円規模で吹き飛ぶとの試算もあり、観光業界への打撃は小さくない。今後検討が進む国内観客数の制限による影響も懸念され、期待された消費効果は通常開催時を大きく下回りそうだ。
 「訪日客は当面ないものと考えている」―。旅行業界の関係者はあきらめ顔だ。五輪を本格的な訪日観光再開のきっかけに期待した時期もあったが、コロナ禍の長期化で期待は完全にしぼんだ形だ。
 野村証券金融経済研究所の桑原真樹シニアエコノミストが大会組織委員会の想定や過去の国際イベントなどを基に試算したところによると、東京五輪に伴うインバウンド需要は観光と五輪関連グッズ購入を合わせて2400億円。海外観客見送りでこれがゼロになる。
 日本の実質GDP(国内総生産)への影響は限定的だが、同研究所の最新予測では、実質GDPがコロナ禍前の水準を回復するのは来年の1~3月期。インバウンド需要を含めて策定した予測から3カ月ずれ込むとみている。
 海外観客見送りの影響は五輪後も続きかねない。大和総研の鈴木雄大郎エコノミストは「日本の魅力を世界に発信する機会が減り、大会を契機に増加が見込まれたインバウンド需要効果が低下する可能性がある」と指摘する。
 五輪関係企業は不安だ。スポンサー各社からは「国内外の観客を迎えての開催を望んでいたが、やむを得ない」(関係者)と観客制限自体は冷静に受け止める声もある。ただ、「大会への注目度が下がらないか」と心配する向きもあり、期待した宣伝効果が薄れかねない状況だ。しかし、中止論も取り沙汰されるだけに「開催されればいい」(別の関係者)との本音も漏れ聞こえてきた。 (C)時事通信社