東京五輪の「希望の火」が25日、福島県から静かに走りだした。開会式までの121日間、約1万人のランナーがつなぐ聖火リレー。新型コロナウイルス感染防止のため、沿道の観客にはマスク着用などが呼び掛けられ、見守る人はまばら。地元住民らは、声援の代わりに拍手を送った。
 リレーは、東京電力福島第1原発事故の際、対応拠点だったサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)からスタート。第1走者の「なでしこジャパン」から聖火を受け取った広野町の高校1年大和田朝斗さん(16)は、赤いたすきがデザインされた純白のユニホーム姿で、ピンクゴールドのトーチを掲げ、左手を振りながら数百メートルをゆっくりと走った。
 大和田さんは原発事故で一時避難したが、今はふるさとで暮らす。「(事故から)立ち直ろうとしている人がいる。福島の復興の現状を知ってほしい」と期待を込めた。一方、「沿道に人が少なかった。コロナが無かったらどんな風景だったかな」と複雑な表情も見せた。
 歴史的なイベントを一目見ようと、沿道には住民らが駆け付けた。大会スタッフが「拍手で応援」「密集ダメ」と書かれたプラカードを掲げる中、ランナーが通り過ぎるとワッと歓声が上がる瞬間もあったが、互いに距離を取って日の丸の小旗を振り、拍手する静かな応援が目立った。「五輪は中止しろ。コロナ禍でやっている場合ではない」と声を上げる人もいた。
 「待ち遠しかった。感激した」。楢葉町で応援した梶原和子さん(70)は、スマートフォンで撮影したランナーの写真を全国の避難先にいる友人に送り、「元気だと伝えたい」と笑みを浮かべた。同町出身の梶原さんは、東日本大震災の津波で自宅が流され、同県いわき市に避難している。年内に帰還する予定だといい、「五輪を機に(地域が)活気づいてほしい」と願った。 (C)時事通信社