東京都心を低空飛行する羽田空港の新ルート運用が始まり、29日で1年。新型コロナウイルスの影響で航空需要は落ち込み、当初想定に比べ運用は伸び悩んでいる。一方、騒音などの苦情は6000件近く寄せられ、国はルート変更も含めた騒音軽減対策を検討している。
 「ゴオオオ」。3月下旬の夕方、JR大井町駅(品川区)周辺では、航空機がごう音を立てながら住宅街や商業施設の真上を通過していった。300メートルほど上空を飛び、車輪や主翼の機体記号が肉眼でも見えるほどだ。
 ルート真下に住む女性(68)は「低く飛ぶので圧迫感があり、うるさい。テレビの音も聞こえない」と苦言を呈する。取材中もたびたび飛来し、至近距離の会話がかき消されるほどだった。
 新ルートは国際便の受け入れ体制強化のため、昨年3月に運用が始まった。南風が吹く午後3~7時の間の約3時間、羽田空港を離着陸する航空機が品川区や渋谷区、川崎市などの上空を低高度で飛ぶ。国土交通省によると当初、この時間帯は1日当たり約130便の着陸、約60便の離陸が想定されていた。
 しかし、新型コロナの影響による航空各社の減便のため、昨年12月の運用状況は着陸が想定の約6割、離陸が約8割で、大半が国内線だった。同省の担当者は「国際競争力の強化と騒音負担を首都圏全体で共有する必要があり、引き続き運用していく」と話している。
 ルート下の住民の騒音や落下物への懸念は強く、国交省には計5947件(昨年12月時点)の苦情が寄せられた。都内や川崎市の住民計29人は昨年6月、運用取り消しを求めて東京地裁に提訴。原告団の須永知男さん(73)は「部品が落ちただけでも甚大な被害が予想される。一刻も早く運用をやめるべきだ」と訴える。
 川崎市東部では、パチンコ店内を超える最大94デシベルが記録されたこともある。国交省は騒音軽減に向けた有識者会議を立ち上げ、都心上空を飛ぶ距離の短縮などが技術面で可能か、議論を進めている。 (C)時事通信社