新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療に従事する医療関係者は、偏見を受けたり、家庭生活に制限を受けたりといった、特有の社会的ストレスにさらされている。東京医科歯科大学大学院精神行動医科学分野教授の高橋英彦氏らは、種々の評価尺度を用いて、COVID-19の診療に当たる医療者におけるストレスの危険因子を検討。「家族などとの同居」などが危険因子として同定されたと、J Psychiatr Res(2021; 137: 298-302)に発表した。

「高年齢」と「女性」が全ての評価尺度で危険因子に

 高橋氏らは、2020年4月20日~6月12日に同大学病院に勤務する全職員588人を対象に面接を実施。同院精神科などが開発した、COVID-19パンデミックにおける医療関係者のストレス評価尺度Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP)や、うつ状態の重症度に関する評価尺度PHQ-9、不安症状の重症度に関する評価尺度GAD-7を用いて、社会的ストレスも含めたパンデミック下の精神的・社会的負荷を解析した。

 その結果、自身が「高年齢である」ことと「女性である」ことが、全ての評価尺度において共通の危険因子として同定された。

 また、PHQ-9では自身が「医師以外の医療関係者」と「休みが少ない」ことが、GAD-7では「実際にCOVID-19患者や検体と接触する業務がある」ことが危険因子として同定された。

 一方、GAD-7やPHQ-9では検出されず、TMDPの解析により明らかとなった危険因子は、「家族などの同居者がいる」ことだった。この因子は、TMDPの下位尺度である感染への懸念および社会的ストレスの双方にとって危険因子だった。社会的ストレスについては、「休みが少ない」ことも危険因子として同定された。

 通常、「家族などの同居者がいる」ことは身体的、精神的、社会的に良好な状態を促進、保護する因子として働くことが広く知られている。しかし、パンデミックという非常事態下にある医療関係者にとっては、平常時とは反対の現象が確認されたといえる。

早期介入だけでなく、社会的ストレスの同定なども重要

 同居者の存在が医療関係者のストレス因子になっている背景として、高橋氏らは「同居者に新型コロナウイルスを感染させてしまうのではないかという心配や、自身の仕事のために同居者の社会活動や余暇活動が制限される、経済的な制限が家計に影響するといった状況があるのではないか」と考察している。

 さらに、「パンデミックという特殊な状況下にある医療関係者への精神的ケアに関しては、早期介入だけでなく、社会的ストレスの同定、十分な休暇の確保、個人の生活状況に配慮した対策も重要だ」と指摘している。

(陶山慎晃)