重症で人工呼吸器を必要とする患者における気管切開の適切な時期に関して、さまざまな研究が行われているが、依然として議論が続いている。米・University of PennsylvaniaのKevin Chorath氏らは、気管切開の時期が人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率や人工呼吸器装着日数に関連しているかを検討するため、17件のランダム化比較試験(RCT)を対象にシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、早期の気管切開が有益であったとJAMA Otolaryngol Head Neck Surg2021年3月11日オンライン版)に報告した。

装着7日以内 vs. 8日目以降でVAP発生率などを比較

 気管切開は長時間の人工呼吸を必要とする患者に一般的に行われる手技で、その利点としては患者が快適になることや鎮静薬の投与を減らせることなどが挙げられる。肺リクルートメントを改善し、入院期間を短縮することを示唆するエビデンスもあり、早期の気管切開は、長期の補助換気を必要とする患者に有益と考えられる。

 しかし、気管切開の時期に関する研究結果は一貫しておらず、議論が続いている。これまでのメタ解析では、人工呼吸器の装着日数やVAPの発生率、短期死亡率などに関して、早期および後期の気管切開で転帰に差が見られないという結果がある一方、早期の気管切開でVAPの発生率が低下するという結果が示されたものもある。

 Chorath氏らは今回、重症の成人患者における早期(人工呼吸器装着から7日以内)または後期(同8日以降または気管切開なし)の気管切開が、VAPの発生率や人工呼吸器装着日数に関連するか検討するため、17件の研究〔累積3,145人(早期の気管切開1,619人、後期の気管切開1,526人、平均年齢32.9〜67.9歳)〕を対象にシステマチックレビューおよびメタ解析を実施した。

 2020年3月31日までMEDLINE、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled Trialsでの文献検索、関連記事、以前のメタ解析、および灰色文献の参照を行った。選択対象は、早期および後期の気管切開を、VAPまたは人工呼吸器装着日数のいずれかで比較したRCTとした。

 システマチックレビューとメタ解析のガイドラインに示された優先的報告項目に基づき、オッズ比(OR)または平均差の95%CIは、変量効果モデルを使用して算出した。

 主要評価項目はVAP発生率と人工呼吸器装着日数、副次評価項目は集中治療室(ICU)入室日数と短期全死因死亡率(入院から30日以内)とした。

早期群ではVAP発生率が0.59%低く、ICU入室日数は平均6.25日短い

 検討の結果、早期の気管切開患者群(早期群)では後期の気管切開患者群(後期群)に比べ、VAP発生率が低かった(OR 0.59、95%CI 0.35〜0.99)。

 また人工呼吸器装着日数について、装着した日数と装着していない日数の両方で算出したところ、早期の気管切開と装着した日数とに関連は見られなかったものの(平均差 -2.40日、95%CI -5.09〜0.29日)、早期群では後期群より人工呼吸器を装着していない日数が長かった(同1.74日、0.48〜3.00日)。さらに、早期群ではICU入室日数も短かった(同 -6.25日、-11.22〜-1.28日)。

 一方、短期全死因死亡率については2,445人の患者の報告があり、両群で同等だった(OR 0.66 、同0.38〜1.15)。

 以上のように、後期の気管切開と比較して、早期の気管切開はVAP発生率の低下や人工呼吸器装着日数とICU入室日数の短縮に関連が見られたが、短期全死因死亡率の低下には関連が見られなかった。

 今回の研究について、Chorath氏らは「実質的な臨床的意味を持ち、人工呼吸器を必要とする重症の成人患者における気管切開の時期に変更をもたらす可能性がある」と結論している。

(今手麻衣)