妊娠前〜妊娠初期における葉酸サプリメントの摂取が、児の神経管欠損症(NTD)の予防に有効であることは知られている。しかし、妊娠中期から後期にかけても葉酸サプリを摂取し続けることが、児にベネフィットをもたらすか否かについては十分に検証されていない。英・Ulster UniversityのAoife Caffrey氏らは、妊娠中を通した葉酸摂取が、出生児の認知能力および脳機能に及ぼす影響について検討した。結果を、BMC Med2021; 19: 73)に報告した。

葉酸サプリとプラセボで11年後の児への影響を検討

 児のNTD予防に対する有効性が確立しているため、妊娠前〜初期に妊婦が葉酸サプリを摂取することは世界的に推奨されている。しかし、妊娠中期以降も葉酸サプリを摂取することが、児の発育に好影響を及ぼすか否かについては明確なエビデンスがない。

 そこでCaffrey氏らは、同国北アイルランド在住の妊婦を対象に葉酸サプリ摂取とプラセボ摂取による児の発達を比較検討したランダム化比較試験FASSTT(Folic Acid Supplementation in the Second and Third Trimesters)の登録者から、出産後の追跡調査(FASSTT Offspring)に参加した母親119例と、出生11年後(2017年12月〜18年11月)に5つの認知能力検査および非侵襲的脳磁図(MEG; Magnetoencephalographic brain imaging)による言語変化への反応評価を受けた児68例を抽出。葉酸サプリ摂取が母子を対象に、児の認知能力および脳機能に及ぼす影響を検討した。

 対象児は、母親が妊娠中に継続して葉酸サプリ400μg/日を摂取していた葉酸群37例(母親の妊娠14週時の平均年齢29.7歳)と、中期以降はプラセボを摂取していたプラセボ群31例(同28.1歳)。児の出生時の血清葉酸値はプラセボ群の68.2nmol/Lに対し、葉酸群では105.2nmol/Lと有意に高かった(P<0.001)。

葉酸群の児で高い情報処理能力や言語反応

 各検査項目別にスコアを比較した。その結果、認知能力検査では処理速度(Processing Speed)のうち情報処理能力(symbol search)〔平均差2.9(95%CI 0.3〜5.5):プラセボ群24.6(同22.3〜26.9)、葉酸群27.5(同26.2〜28.8)〕および抹消課題(cancellation)〔平均差11.3(同2.5〜20.1):それぞれ83.7(同75.8〜91.6)、95.0(89.6〜100.3)〕はいずれも葉酸群で有意に高かった(順にP=0.03、0.04)。

 男女別に見ると、言語理解(Verbal Comprehension)〔平均差6.5(95%CI 1.2〜11.8):プラセボ群92.4(同88.5〜96.3)、葉酸群99.0(同95.2〜102.7)〕は葉酸群の女児で有意に高かった(P=0.03)。

 一方、脳磁図による言語変化への反応評価ではベータ波帯域(13〜30Hz)〔平均差83.2(95%CI 15.0〜151.4):プラセボ群26.4(同2.7〜50.1)、葉酸群109.6(同52.4〜166.8)〕および高ガンマ波帯域(49〜70Hz)〔平均差70.7(95%CI 6.5〜135.0):それぞれ30.1(同-4.4〜64.6)、100.8(同48.6〜153.0)〕と、いずれも葉酸群で有意に高い反応が示され、葉酸群の児では言語の意味処理がより得意であることが示唆された。

 Caffrey氏らは今回の結果から、「妊娠初期以降の継続的な葉酸サプリ摂取は、出生児の神経認知領域の発達にベネフィットをもたらす可能性が認められた」と結論。「非侵襲的な脳磁図検査を用いることで、児の脳機能活動を客観的に評価できることが証明された」と付言している。

松浦庸夫